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対照的にケーシックは小規模なミーティングで有権者に語りかけている(筆者撮影)

 筆者は、公立高校の食堂を会場に使ったケーシックのタウンホール・ミーティングを取材した。トランプのラリーには空港なみのセキュリティチェックがあったが、ここは出入り自由だ。ステージのようなものはなく、予定の時間に登場したケーシックは、仕事を終えてネクタイを外してくつろいでいる普通のおじさん、という雰囲気で来場した人に挨拶した。

 ケーシックは、「政治では、求めるものをすべて手に入れることは不可能だ。異なる意見の人とも一緒に仕事をし、妥協もしなければならない。今の政治家はそれをしないから、議会が膠着状態になり、その結果損をしているのは国民だ」と「協働」をよびかける。

 また、共和党の他の候補は、予備選のライバルや民主党候補を激しく批判し、自分との違いを際立たせようとするが、ケーシックは有権者から質問されても、「自分の政策については話すけれど、他の候補については語りません」と、きっぱり拒否する。

 会場の人々の意見に耳を傾けていると、ケーシックの人気がジワジワと上昇してきたのは、トランプへの反動として「品性がある政治家」を求める動きなのだと理解できた。1980~90年代には、共和党、民主党、どちらの党にもケーシックのような政治家は多かったのだが、それが消えつつあることを嘆く人も少なくない。ケーシックはそんな有権者層を狙っている。

 トランプの強みは、弱点でもある。

 ソーシャルメディアは広まるのも速いが、忘れられるのも速い。トランプはそれを知っているから、毎日のように炎上するネタを探している。だが、政策よりもパフォーマンスに惹かれて集まったファンは、似たようなパフォーマンスを繰り返されると飽きてしまう。

 20日のサウスカロライナ州予備選でも勝ったトランプの人気は、当初考えられていたような一時的なものではなさそうだ。しかし彼の戦略の危うさを考えると、たとえ予備選で勝ったとしても、有権者の目がさらに厳しくなる本選でトランプが持ちこたえられるかどうか、疑念を抱かざるを得ない。

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≪筆者・渡辺由佳里氏の連載コラム「ベストセラーからアメリカを読む」≫