市長の主張「問題が起きれば後始末は地方自治体任せ」

しかしそれでも、「市民をどう守るべきか」「国に何を求めるか」「自治体の長としての苦悩」などを著者に対して語った市長のことばには大きく納得できるものがある。

「私はクルド人をウェルカムしているわけではありません。誤った解釈がSNSで拡散されて、殺すと脅されて、大変迷惑しています」とはっきり述べたうえで、次のように主張しているのだ。


「在留資格のないクルド人は自国に帰るべきです。それなのに、国の入管庁の判断で、多くが仮放免扱いで川口市にいます。その間彼らも食べなくては生きられません。それで、あくまでも国の厳重な管理のもと、働く場が必要と判断したわけです。入管庁が仮放免にした外国人に仕事がなく、お金もないと、トラブルの原因となります。しかも問題が起きれば後始末は地方自治体任せ。市の財源は圧迫されています。もっと国に責任を持ってほしいということです」(174ページより)

市側の苦悩も理解できるが、その一方にはクルド人側の戸惑いや苦悩もあることだろう。つまり、「どっちが悪い」と決めつけられる問題ではないということである。

だからこそ、例えば「在留資格を持たない外国人は帰し、在留資格を持つ人とは共生の手段を探る」など、まずは国(入管)が適切な対応をすることが必要なのではないだろうか。

おどろきの「クルド人問題」

おどろきの「クルド人問題」
 石神賢介・著
 新潮新書

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[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。他に、ライフハッカー[日本版]、東洋経済オンライン、サライ.jpなどで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」などにも寄稿。ベストセラーとなった『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)をはじめ、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)など著作多数。2020年6月、日本一ネットにより「書評執筆本数日本一」に認定された。

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