金融政策は機動性の高さもあり危機時に有効な手段だが、弛緩しきった政策が多少動いても、凍てついた不安心理を溶かすのは容易ではない。市場は「政策が成長の下振れリスクを埋めることができる、との確信を見失った」(BNPパリバ)という。

 追加手段の1つとなる見通しのマイナス金利も評価は芳しくない。先行した欧州は1年半が経過しても成長は横ばいのまま。銀行貸出は増加したが住宅ローンが中心で、競争の厳しい地銀が体力を消耗する姿は変わらない。企業も「不安感が台頭し現金を保持しておきたいインセンティブが強い」(大和総研ロンドンリサーチセンターの菅野泰夫シニアエコノミスト)と、積極投資に動く気配は乏しい。

 疑いの目は、金融不安と縁遠かった日本にも向く。3階層の金利システムを導入しても、利回り低下が地銀経営に重くのしかかることは間違いなく、大手銀も収益機会が失われる。マイナス金利を「ない」と言い続けた黒田東彦総裁の変節ぶりも「どうしてもサプライズを狙わねばならないほど、次の一手に窮しているのだろうか」(ヘッジファンド幹部)と映る。

米大統領選有力候補、ほぼ全員が反ウォール街

 米ニューハンプシャー州で行われた大統領予備選挙は、サンダース上院議員、トランプ氏が勝利。初戦のアイオワ州と異なる展開は今後の混戦を示唆する結果となったが、現時点で数少なく確実なことがある。誰が勝ってもウォール街には逆風で、危機時の公的資金による救済など「もっての外」となる見通しが濃厚であることだ。

 クリントン氏は監督強化などを盛り込んだ改革案を発表済みで、トランプ氏も課税強化案を表明。クルーズ氏は経営危機の金融機関は「破綻させる」と明言した。

 一方の現職・オバマ大統領は議会の抵抗を受け本予算審議すら入れない状況で、リーダーシップは期待できそうもない。

 難民問題に揺れる欧州も、躍進する極右・極左政党は基本的に銀行救済に否定的見解だ。ギリシャ懸念が今回強まった裏側には、救済を主導してきたメルケル独首相の求心力低下もあるとされる。世界の金融システムはしばらく、薄氷上を歩むしかない。

 (基太村真司 編集:田巻一彦)

[東京 10日 ロイター]
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