たとえば、今や定着した「善玉菌」「悪玉菌」という言葉が日本人研究者によって名付けられたことなど豊富なエピソードと、人物イラストや図版を多用した本書は、子供時代に見入った図鑑を見ているかのようにワクワクする仕掛けになっている。


一方で、抗生物質の濫用や超加工食品、マイクロプラスチックの影響といった章(第8章 「便秘と大腸がん 腸内細菌との関係は?」)には、現代の食生活への批評的な視点も垣間見える。本書は「健康本」を超えた、社会への問いかけも含んだ一冊なのだ。

「第二の脳」と呼ばれてきた腸は、もはや「もう1つの自己」と言っていい。近年、人体の中でも、とりわけ大腸が注目されているが、本書が描くのは、私たちの体の中に棲む「マイクロバイオーム(微生物叢)」という、科学的探究と社会的関心が交差する世界だ。


健康、老化、そしてメンタルまでも左右すると言われる腸内細菌とはいかなる存在なのか?


『健康の土台をつくる 腸内細菌の科学』は、その全貌に迫るための指針である。未来の医療と「人間とは何か」を再定義する一冊として、人体、そしてその科学に興味があるすべての人におススメしたい。

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 『健康の土台をつくる 腸内細菌の科学
  内藤裕二[著]
  日経BP[刊]

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内藤裕二(Yuji Naito)
京都府立医科大学大学院医学研究科 生体免疫栄養学講座 教授
京都府立医科大学卒業。米国ルイジアナ州立大学医学部分子細胞生理学教室客員教授、京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学教室准教授、および同附属病院内視鏡・超音波診療部部長などを経て、2021年4月より現職。腸内細菌学、抗加齢医学、消化器病学を専門とする。2023年、胃腸の機能低下と病気のリスクとの関連について研究する「日本ガットフレイル会議」を発足。医師向けの『すべての臨床医が知っておきたい腸内細菌叢』(羊土社)のほか、一般向けの著書多数。

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