ナイの知的な後継者たちは、彼が知っていた世界から、あまりに遠ざかったアメリカを導くという仕事に直面している。

時期は予測できなかったとしても、ナイは自らのキャリアを決定付けたアメリカの世紀が終焉を迎えることを予見していた。ただ、それがこれほど早く起こるとは、ほとんど誰も予想しなかった。

ナイの見方では、アメリカのアイデンティティーとリベラルな精神は切っても切れない間柄だ。だから外交政策に携わる私たち全員が、自分たちの愛する国と自分たちの価値観は同じものであるかのように主張することができた。

アメリカが裏切りを繰り返し、時には過ちを犯しながらも、私たちはアメリカの理想を見失わず、この国が本来持つべき理想への信頼を捨てることもなかった。

トランプの下で、アメリカと、私たちが長らく母国と関連付けてきた理想とが切り離されようとしている。ナイの後継者たちは、愛すべき国家と現政権が置き去りにした大切な価値観とのギャップを乗り越え、いつか再び橋渡しをしなくてはならない。

そして私たちはナイの死を悼むとともに、彼が遺した世界の在り方が今まさに失われつつあることを悲しまなくてはならない。

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