コロナ禍で迫られる韓国撤退

2021年、最大の転機が訪れる。米スターバックス社が韓国撤退を決めたのだ。コロナパンデミックで各国の売上が落ち込むなか、韓国政府がカフェの利用を制限するなど韓国スターバックスは大きなダメージを被った。

撤退か多額の立て直し資金投入か2択を迫られた米スターバックス社は先行き不透明な韓国からの撤退を決め、米スタバ社の持分の35%をイーマートが、65パーセントをシンガポール投資庁が買収。イーマートは米スタバ社とライセンス契約を締結した。イーマートの持分を100パーセントにしなかったのは、資金もさることながら業績が回復したとき米国社が再買収する余地を残したとみられる。

検問通過して入る非武装地帯の店や財閥の会長宅のような店も

「会長宅スタバ」と呼ばれる韓国のスターバックス奨忠ラウンジR店の1階エントランス
「会長宅スタバ」と呼ばれる韓国のスターバックス奨忠ラウンジR店の1階エントランス(撮影筆者)

このライセンス契約によって、イーマートは売上の5%をロイヤリティとして米スタバ社に支払いながら、レシピや店舗インテリアなどグローバルライセンスシステムを利用。一方で自由度が増したイーマートは高単価のリザーブ店を増強、24年には北朝鮮の農地や建物を見渡せる愛妓峰(エギボン)生態公園店やカクテルも販売する奨忠(チャンチュン)ラウンジR店を開店した。

愛妓峰生態公園店は北朝鮮に最も近いスタバで北朝鮮までわずか1.4キロしか離れておらず望遠鏡を使うと住民の姿が見えるという。民間人の出入りが制限された南北共同利用水域に位置しており、検問を受けないと入店できないという特殊な店舗だ。

一方の奨忠ラウンジR店は企業家の庭付き邸宅をリノベーションした店で「会長宅スタバ」「邸宅スタバ」と呼ばれており、ホテルの「ラウンジバー」をイメージしている内装が人気だ。

最近ではチェーン店では飽き足らず、バリスタが厳選したスペシャリティーコーヒーを提供するような個人オーナーの店がソウルの新沙洞(シンサドン)、聖水洞(ソンスドン)、望遠洞(マンウォンドン)などで人気を集めているが、こうした新しい体験を求める層にもアピールできるスペシャルストアを開発する韓国スターバックスはこれからも店舗数を拡大していくことだろう。

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