さらに07年の13号機から、それまでJAXAが担当していた打ち上げ業務はロケット製造を担う三菱重工業に移管された。民営化によって、製造責任の一元化や迅速な意思決定、衛星打ち上げビジネスの幅広い展開などが期待された。実際に三菱重工業を中心に民間主導の受注活動が進められ、12年には韓国の地球観測衛星、15年にはカナダの通信放送衛星が搭載されるなど5つの海外衛星を宇宙に運んだ。

しかし、平均年2回の打ち上げ頻度、1回約100億円の打ち上げ費用がネックとなり、高い打ち上げ成功率にもかかわらず商業打ち上げの受注は思うようには伸びなかった。2010年前後は円高も海外衛星の打ち上げを受注するには逆風となった。

現在、世界の衛星打ち上げの5割超を担う米スペースXの24年の打ち上げ成功回数は131回で、基幹ロケット「ファルコン9」のコストは1回当たり約60億円とされる。今後は打ち上げ費用がH2Aの約2分の1(約50億円)、年7回以上の打ち上げを目指す後継機「H3」で、国際衛星打ち上げビジネス市場で日本の存在感をアピールしていく。

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次に、H2Aロケットのユニークな3つの特長を関係者のコメントで振り返ってみよう。

2.H2Aロケットの「ここがすごい」①日本初の宇宙輸送事業の担い手

H2Aロケットは50号機までに約100機の人工衛星を運んだ。

JAXA理事長の山川宏氏は「H2A以前のロケットは(機体自体の)開発に専念していたが、H2Aはロケットの果たす役割、日本政府あるいはJAXAが必要とするサービスを意識して開発し、実際に運用された初めてのものだ」とH2Aの意義を述べた。

初号機からH2Aの開発に携わった三菱重工業宇宙事業部長の五十嵐巌氏は「50号機までの約25年間は、1つの型式のロケットで成功を続ける難しさ、衛星打ち上げ輸送サービスを会社で責任を持って行うことの厳しさの連続だった。H2Aで日本の宇宙輸送の信頼性を築けた」と振り返った。

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打ち上げ成功直後の記者会見に笑顔で臨む。左から三菱重工業宇宙事業部長の五十嵐巌氏、環境省地球環境審議官の松澤裕氏、文部科学省研究開発局長の堀内義規氏、JAXA理事長の山川宏氏(6月29日種子島宇宙センター 筆者撮影)
脅威の成功率と6号機の教訓
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