OrganExをヒトに応用する道のりは容易ではありませんが、心臓発作や脳卒中などで血液循環障害が発生した患者の損傷した臓器や組織の治療に役立てられたり、心停止後のドナー(提供者)の臓器機能を維持回復させて移植の機会を広げられたりする可能性があります。

2022年は「ブタからヒトへの臓器移植元年」と言えます。1月に米メリーランド大で世界で初めて遺伝子操作されたブタの心臓がヒトに移植され、移植された男性は2カ月後に死亡しました。男性に犯罪歴があったことで、倫理面がひときわ論争になりました。

さらに7月には、米ウォール・ストリート・ジャーナルが「米食品医薬品局(FDA)が、ブタ臓器をヒトに移植する臨床試験(治験)を承認する見通しとなった」と報じました。治験の開始時期は明らかではなく、当面はFDAが個別の案件ごとに審査する予定と言います。実現すれば、臓器移植のドナー不足の解消につながるかもしれないと期待されています。

日本でも数年後にはブタ臓器のヒトへの移植が承認されるという見方もあります。その時、OrganExの技術によって、ヒトからヒトへの臓器移植は増えているでしょうか。それとも、ブタ臓器をヒトに移植するためにOrganExが使われているでしょうか。

新しい医療技術は、安全性とともに倫理面も慎重に検討されなければなりません。科学者や政治家だけでなく、一般国民も経過を見届けて時には声を上げることが必要でしょう。

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