ただし、葬儀と政治的祭典を混同することで感情に訴える国葬推進派の作戦をもってしても、国葬賛成派が劇的に増加することないだろう。興味深いのは、国葬への不信が、安倍政権以来、自民党が行い続けてきたことへの不信とパラレルだということだ。
たとえば、国会での議決を回避して重要事項を閣議決定で済ましてしまうことは安倍政権下でも行われてきた。憲法53条による臨時国会の開催要求を無視しているのも安倍政権からの悪癖だ。さらに国葬への予算が膨らみ続けているのは、オリンピック予算が膨らみ続けてきたことを彷彿とさせる。
「弔問外交」なのだと安倍元首相の国際的な人望を皮算用して失敗することも、四島返還に期待をもたせ、多額の経済的支援を行った結果、一島も還ってこなかったロシアとの北方領土返還交渉という前例がある。もし政府が国葬への支持を広めたいなら、まず安倍政権から続く自民党政権の悪癖を反省し、まっとうな立憲政治へと立ち戻る必要があるだろう。
今からでも撤回するのが身のため
とはいえ、そもそも国葬というものは無理をして執り行うべきものでもない。ここまで収拾がつかなくなってしまった安倍元首相の国葬は、今からでも取り止めてしまったほうがすっきりするのではないか。慣習通り内閣と自民党の合同葬という形式にして、招待客や規模を縮小して執り行うことにすれば、落としどころは見えてきそうだ。9月12日、鎌倉市議会は国葬実施撤回を求める意見書を採択した。9月9日には鳥取県日南町議会が国葬中止を求める決議案を可決している。
このように、地方自治体レベルでも、国葬の見直しを求める意見が出てきている。国葬を潔く撤回する決断力が岸田首相には求められる。結果的にそれは、政権側にとってもメリットがあることだと思うのだが。