一方、記念館には(少なくとも私が最後に訪問した数年前の時点では)アイヌに関する展示はない。あたかもアイヌという人々が存在していなかったレベルで何もない。だがこの屯田兵部隊は、旭川におけるアイヌ迫害の主体のひとつであったのだ。

明治時代、現在の旭川都市圏一帯に入植する和人の邪魔になるアイヌは、「保護」の名のもとに近文という地域に強制移住させられた。近文は今でこそ市街地の中心部にあるが、当時は橋のない川に囲まれた湿地帯で、和人が定住するには不向きな土地とされていた。現在、近文には川村カ子トアイヌ記念館があるが、旭川兵村記念館と比べて規模は小さい。

近文アイヌの土地問題は20世紀を通して闘争が行われており、1970年代にも旭川で大きな運動が起こった。この運動は、旧土人保護法の廃止と1997年及び2019年のアイヌ新法の制定につながっている。旭川のアイヌといえばゴールデンカムイにも出てきたカムイコタンが有名だが、アイヌ迫害に関しては近文アイヌの歴史が重要なのだ。

漫画はまだ終わっていない

筆者が『ゴールデンカムイ』の最終回を読み、また「ゴールデンカムイ展」の報に触れたとき、違和感を覚えたのは以上のような知見に基づいている。アイヌと第七師団はけしてフラットに並べることはできない。どちらも作中にゆかりがあるからといって、両方の歴史的な物品を同様に消費するという態度は、迫害の歴史の相対化に他ならない。

ただし、『ゴールデンカムイ』という漫画はこれで終わったわけではない。単行本で大幅な加筆修正があるといわれており、批判を踏まえた新たな最終回が描かれる可能性もある。また、そもそもひとつの漫画にあらゆる負担を背負わせるわけにはいかないのも事実だ。そうなれば、問題は消費者である我々が、この漫画とアイヌの歴史についてどのような態度を取るのかということになるだろう。

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