そして日常運転評価をしっかりと調べた上で、交通違反・事故歴、医学的評価、当事者の自己評価、家族・介護者による評価、免許更新時の評価を加えて総合的に運転可否を判断するべきだ。条件付免許になった場合は、眼鏡の着用もその一部だが、場所、時間、サポカーなどのADASの機能が付いた車両の利用を検討するのもいいだろう。
再教育やリハビリが必要なケースも出てくる。どうしても運転がダメな場合は運転を断念する他ないが、今後は自動運転など代替手段を提案できるかもしれない。
普段の運転からデータを収集
──現在研究している内容を教えてほしい。
私はこの運転適性診断のうち、日常運転評価の開発を中心にエンジニアとして検討している。
一つはドライブレコーダー、車載センサー、スマホなどを用いた運転自動評価システムだ。徐々に導入されてきているテレマティクス保険は、今のところドライブレコーダーを用いた加速度のみの測定だが、走行中にドライバーが目にする道路標識や信号などを画像認識したり、どれくらいの車間距離をとっているかをセンサーで測れるようになってきた。こうすることで正しい運転ができているか、普段の運転から診断できるようになると考えている。ドライブレコーダーメーカーや運送会社などとコンソーシアムを作り、検討を進めているところだ。
運転に必要な視野が狭くなってしまう緑内障を見つけるシステムについても、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の一環で研究を進めている。信号や飛び出しなどが見えづらくなる緑内障だが、無自覚で進行してしまっている人が多い。
また職業ドライバー向けの運転適性診断にも力を入れている。実車と大きく異なるドライビングシュミレーターが使われているのは、運転に必要な能力を測るのに特化させたためで、ビジュアルにも力を入れたからだ。自動車事故対策機構(NASVA)で活用することを考えている。
さらに、高齢者の生活と運転に関する身体特性および認知機能を含む包括的な人間特性データベース「DAHLIA(Data Repository for Human Life-Driving Anatomy)」を構築するなど今の時代に応じた運転適性診断の仕組みを検討している。このDAHLIAは5年間にわたって約400名の同一高齢者の約2000項目におよぶ認知機能・身体・運転の連続データが蓄積されている。(2021年1月現在)