<イランによって直接・間接的に攻撃されてきた歴史を持つサウジが、イランと外交関係正常化の合意を発表。不信感の残るサウジがイランと和解する背景を分析>

サウジアラビアとイランの外交関係正常化に向けた合意が発表されたのは3月10日のことだ。共同声明には2カ月以内に双方の大使館を再開することで合意したなどとあるが、合意の全容は明らかにされておらず、何らかの条項が履行されたという発表もまだない。

当該合意に対する両国の認識の違いは顕著だ。

サウジのファイサル外相は、これは両国が意見の不一致を全て解決したことを意味しないが、対話を通して論争を解決したいという相互の意欲を示すものだと述べた。サウジの英字紙アラブ・ニュースは、サウジ国民が「不安、警戒、疑念、慎重な楽観」を持ってこれを受け止めていると報じた。

サウジの著名なジャーナリストで汎アラブ紙シャルクルアウサトの元編集長でもあるターリク・ホマイドは、国交再開で両国の「乖離」が過去のものになるわけではない、イランの核開発問題はわれわれの想像以上に大きいと警告した。

サウジにはイランによって直接・間接的に攻撃されてきた歴史と記憶がある。1987年にはサウジに巡礼に来たイラン人がサウジ批判デモを行って治安部隊と衝突し、400人以上が死亡。在イランのサウジ大使館をイラン人が占拠した。

96年にはイラン系武装勢力によりサウジ東部の州のホバル・タワーが爆破され、米兵19人とサウジ人1人が死亡した。2011年にはサウジのジュベイル駐米大使(当時)を狙った暗殺未遂事件が起こり、16年には在イランのサウジ大使館や領事館をイラン人が襲撃し、19年にはイラン系武装勢力がサウジの石油施設にミサイル攻撃を行った。イランへの不信が拭えないのも無理はない。

他方、イラン国営メディアのパルストゥデイは、当該合意はアメリカとシオニスト政権イスラエルの失敗だとし、イラン最高指導者ハメネイ師の軍事顧問であるラヒム・サファビ少将は、アメリカの覇権主義に終止符が打たれ、アメリカとシオニストの力の衰退の時代が始まったと述べた。

サウジにとってこれは、もし成功すれば利益の見込まれる合理的な取引であるが、イランはこれを対米、対イスラエルのプロパガンダに利用する。合意から2週間もたたない3月23日にイラン製ドローンが駐シリア米軍を攻撃し、米兵を含む7人を死傷させたことは、イランが引き続き「大悪魔」であるアメリカへの「抵抗」を続けるという意思表示であろう。

イランとの関係正常化はリスクヘッジ
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