<公的機関に独立性がなく、権力者に服従する人だけが要職に就き、市民の声は潰される社会を強化してきた大統領。さらなる権力強化で国難を乗り切ろうとする無謀さ>

イスラム教の聖典コーランには、「地震」という名の章がある。そこには次のようにある。

「大地がぐらぐらと激しく大揺れに揺れ/大地がその重荷を投げ出し/『かれ(大地)に何事が起こったのか』と人間が言う/その日(大地は)一部始終を語るだろう/あなたの主(神)が啓示したことを/その日、人間は分別された集団となって(地中から)進み出て/自らの所業を目の当たりにする/ただ一粒の重みでも善をなした者はそれを見る/ただ一粒の重みでも悪をなした者はそれを見る」

これは現世の終わり、終末の日についての啓示とされる。コーランを神の言葉そのものと信じるイスラム教徒が、地震を何よりもまず終末と結び付けて考えるゆえんだ。

2月6日にトルコで大地震が発生した際も、多くのイスラム教徒が終末の到来を覚悟しただろう。しかし現世は少なくとも現段階では、まだ終わってはいない。それでも、地震自体は彼らにとって神の御業(みわざ)だ。

イスラム教徒は、この世のあらゆる現象を神が一瞬一瞬、創造していると信じている。だがこれは、彼らが地震の被害を甘受することを意味しない。特に今回の地震に関しては、救援活動や対応の遅れと、被害を増大させた手抜き工事について、エルドアン政権を非難する声が少なくない。

トルコの日刊紙コルクスズは、瓦礫に埋もれ亡くなった娘の手を離そうとしない父親の写真を掲載し、「地震に対する予防策を取らず、次から次へと区画整理や違法建築を許し、資格のない人間を国家機関に置いた者たちは、こうして記憶されることになるだろう」と記した。

米シンクタンク中東研究所トルコ研究センターのディレクターであるギョヌル・トルは、フォーリン・ポリシー誌への寄稿で、トルコのように建物の耐震基準が守られず、大統領への忠誠心があれば要職に就くことができ、公共機関に独立性がなく、良心的な市民団体が排除されている国では人災が人命を奪うとし、全ては自分一人に権力を集中させてきたエルドアン大統領のせいだと非難した。

最大野党である共和人民党(CHP)の党首ケマル・クルチダルオールも、「この事態を招いた責任を問うなら、それはエルドアン氏にある。与党は地震に対する備えを20年行ってこなかった」と批判した。CHPがイスタンブールから被災地に救援隊を送ろうとしたところ、トルコ政府がそれを阻止した件も告発されている。

「手抜き工事の責任はあくまで業者にある」