本題に戻ろう。マスメディアに問題があるのは菅の指摘どおりだ。だが、「国民」に示しをつけろと政治家が言及した結果、民放の構造上の問題は変わったか。筆者が見る限り、何も変わっていない。NHKは報道機関として、より機能するようになったか。何も変わっていないばかりか、現場からは時の政権の顔色をうかがう話ばかりが聞こえてくる。
彼は事あるごとに「既得権益」を見つけ、「敵」に仕立て上げる。その処罰行動を「改革」と呼び、反既得権益、反マスコミ層の鬱憤を晴らし、満足を与えてきた。体系的なイデオロギーを持たず、何かにつけ敵を仕立て、「国民の意思」を錦の御旗に、彼が認定するところの敵と既得権益を壊そうとする。こうした政治手法を私はポピュリズムと呼んできた。菅政治の真骨頂は、派手さはないが、確実に実行する「地味なポピュリズム」なのだ。菅の手法は、時代と呼応するように支持をつかんでいる。そのマーケットを狙った一冊は、確実に売れている。
<本誌2020年11月24日号掲載>
米・イラン戦争で変わる地域紛争の「大前提」/石油危機を恐れるべき理由