日本のメディアが安倍政権に対してネガティブ一色になってしまう背景として本書が主張する「放送局内に反日勢力と共産主義者が入り込んでいる可能性」というのが、その典型だろう。陰謀論はあまりに分かりやすく安直なストーリーであるため、同じ価値観を共有する人々の間では盛り上がるが、異なる価値観を持つ人々との間では議論が成立しにくい。
プロパガンダを批判するつもりが、なぜか陰謀論に落ちていく。近年のケント本は陰謀論の一パターンとして読解すると、別の地平が見えてくるというのが私の見解だ。もっとも、こうした「どうしちゃったの?」と言いたくなる問題を抱えているのは、右派に限ったことではない。そこが、現代社会のなんとも難しいところである。
<本誌2020年3月31日号掲載>

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