ケニアのヨーロッパ向け輸出にとっての障害の一つは、EUが環境や健康などの規制に厳しく、その規格に合わせるための投資が大きくなりやすいことにある。

例えばEUは口蹄疫などの対策として、誕生段階から電子耳タグをつけて追跡可能にした牛の肉しか輸入していない。アフリカでこうした対策を取れる国はごく僅かだ。

ケニアも牛肉を輸出しているが、その輸出先はカタールやクウェートなど中東諸国がほとんどで、EPA締結でEU向け輸出がすぐに増えるわけでもない。こうした品目はいくつもある。

アフリカのなかのフライング

とすると、今回の合意はどちらかといえば政治的パフォーマンスに近い。

中ロとのアフリカ争奪が激しさを増すなか、ケニアとのEPA締結はEUにとって「アフリカに協力的な国がある」というアピールになるが、それはケニアからみて「先進国に恩を売った」ことになる。アフリカに限らず途上国・新興国において「先進国より」とは、こうした外交方針も含まれるのである。

そのため、こうした外交方針をとらないアフリカ各国が追随するかは疑問だ。むしろ、アフリカ各国にとって、ケニアがEUと単独でEPA協定を締結したのはフライングに近い。

先述のように、ケニア以外の東アフリカ諸国は2014年にEUとの間で結ばれたEPAを批准しなかった。

これに関して、ヨーロッパでは「ケニア以外の東アフリカ各国は世界で最も所得水準の低いLDC(後発開発途上国)に認定されていて、すでに国際的に貿易の優遇措置が認められているため、あえてEUとEPAを結ばなくても無枠輸出が保証されているから」という解説が一般的だ。

この指摘は誤りではない。しかし、それが全てでもない。

むしろアフリカでは、EPAによってヨーロッパ製品が急激に流入することへの警戒が強かったことが理由としてあげられやすい。アフリカの輸入に占めるEUの割合は中国より多いことは、すでに述べた通りだ。

ケニアが「先進国より」外交をアピールし、先進国からそれなりの反応を引き出せることは、裏返せばそれだけアフリカで先進国への警戒が強いからこそ、といえる。

中ロ支持というより先進国への警戒
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