国別でみると中国はいまやアフリカ最大の貿易相手だが、慢性的に中国側の輸出超過の状態にある。中国のアフリカからの輸入はアンゴラやスーダンなどいくつかの産油国に集中している一方、アフリカ各国に向けて工業製品を輸出している。

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そのため、産油国以外のほとんどの国にとって中国との取引は大幅な入超になりやすい。

それは現地にとって中国製の安価な製品を買いやすくするものの、中国にモノを売って稼ぐことを難しくする。

つまり、ケニアのような大産油国でない国にとって、EUとのEPAは対中貿易では得られにくかった輸出拡大を期待させる。ケニアと同様の合意は2016年にガーナがEUと結んでおり、アフリカでは2例目となる。

中国の沈黙

もともとケニアは冷戦時代から、アフリカのなかでも先進国よりの外交方針が目立つ国の一つだ。

コロナ感染拡大後、中国でアフリカ人差別が噴出した際、さすがにアフリカ各国政府から中国批判が表面化したとき、ケニアはその先頭に立った国の一つだった。また、ウクライナ侵攻後に行われた国連安全保障理事会でケニア大使は軍事侵攻を批判した。

だからこそ、5月に岸田首相がアフリカ各国を歴訪した際にも訪問先に選ばれた。

こうした背景のもと、ケニアはEUとの取引を加速させる協定を結んだわけだが、アメリカとも同様の協議を行なっている。

世界銀行の統計によると、ケニアのGDPは1100億ドル(2021年)で、サハラ以南アフリカでナイジェリア、南アフリカ、エチオピアに次ぐ第4位である。

そのケニアとEUのEPA締結について、共産党系英字ニュースGlobal Timesをはじめ中国国営メディアは沈黙している。

ケニアはなぜEPA締結に応じたか

それでは、ケニアとEUのEPA締結はオセロゲームのようにアフリカ全体で勢力図が塗り替わるきっかけになるのか。

残念ながら、そう単純な話ではない。

その最大の理由は、そもそもEPAの締結で形式的には間口が広がったとしても、ケニアからの輸出が短期的にはそれほど増えないと見込まれることだ。

もともとケニアとEUのEPA締結は突然のものではなく、10年近い協議の産物でもある。EUは2014年、東アフリカ5カ国との間でEPAを締結していたが、ケニア以外の国はこれを批准しなかった。

逆に、これを批准したケニアはその後、すでにEUから無枠輸出などの優遇措置を認められてきた。こうした条件は今回の合意で大きく変わるわけではない。

政治的パフォーマンスに近い
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