ギリシャで反EUの風潮が強まったのは、こうした流れの中でのことだ。ポピュリズムは右派と左派の双方で台頭した。長いことくすぶっていたマケドニアとトルコとの間の火種は、ナショナリストにとって勢力拡大に使える格好の道具になった。

しかし、現在のギリシャの状況は少しずつ改善しているようにみえる。

GDPは過去1年で2.3%の伸びを見せ、失業率は約21%に低下。今年6月にはユーロ圏と3回目にして「最後」となる10億ユーロの追加支援策に合意した。こうしてギリシャはこの8月、金融支援から8年ぶりに「卒業」し、負債は今後30年で返済できる見込みだ。

マケドニアについても風向きはいくらか改善しており、9月末にはマケドニアが国名を「北マケドニア共和国」に変更する是非を問う国民投票を実施する。昨年はトルコのエルドアン大統領が、同国の大統領としては65年ぶりにギリシャを訪れた。

しかし、火種はまだ消えていない。ユーロ圏は今もギリシャに、60年まで2.2%の成長率維持を義務付けている。

来年、ギリシャは議会選挙を控えている。経済が改善されながらも困窮が続く状況では、これからも国民の不満が反ユーロ圏政策という形で表面化していくだろう。

経済の改善を帳消しにしたり、反EU感情に火を付けるには、新たな危機が1つあれば十分だ。マケドニアかトルコと衝突する政治危機か? それともアメリカ主導の世界貿易戦争という経済危機か?

しかし国民の最大の関心は、景気低迷から脱することにあるはずだ。

<本誌2018年8月14&21日号掲載>

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