しかし、この判決の前日、連邦最高裁の同じメンバーは、真逆の論理で銃を所持する権利を憲法上の権利と位置付け、州がその権利を奪うことはできないと主張した。
矛盾と言うほかないが、ある評論家の表現を借りれば、保守派の判事たちが「一貫した法的原則を適用する」ことよりも「右派の政治的アイデンティティーを法律に反映させる」ことを意図していると考えれば、意外な判決ではない。
もしかすると、連邦最高裁が判例を変更した大きな要因は、共和党がアメリカ社会の人口動態の潮流に不安を抱いていることにあったのかもしれない。私の学生たちに聞くと、民主党を支持しているのは、出生率が高く、人口が増加傾向にある層というイメージが強い。それに対し、共和党支持層は人口に占める割合が縮小傾向にあるという印象がある。
今回の判決を受けて、共和党支持者の多い州では中絶が禁止になり、民主党支持者の多い州では引き続き中絶が認められる可能性が高い。その結果として、共和党支持者の人口が減少し、民主党支持者の人口が増加する潮流を押しとどめられる......とでも計算しているのだろうか。
保守派はもっともらしい言葉で中絶反対論を訴えているが、ひょっとすると選挙で有利な立場に立つための恥も外聞もない行動なのかもしれない