中国の「子分」になるのは嫌

ロシアの人々は、現在までの状況をどう評価しているのか。

通貨ルーブルが暴落し、株式相場も大幅に値下がりしていることに強い不満を抱く人も一部にいる。また、私の友人の1人は、一連の出来事により、ロシアが「兄弟のような国にまで一緒にいたくないと思われている」ことを思い知らされたと語った。

しかし、このような見方は少数派だ。大多数のロシア人は、ロシアが今のところ勝利を収めていると考えている。

ロシアの世論が見るところ、欧米主導の安全保障体制は揺らいでいて、欧米が自国の兵士を犠牲にしてまでウクライナを守るつもりがないことも明らかになった。

それに、ヨーロッパの首脳は、慌てふためいてモスクワ詣でを始めている。アメリカが再三にわたり話し合いに乗り出していることも、ロシアの戦術上の勝利に見えている。

ただし、ロシア人が気掛かりに感じていることが別にある。それは、中国をパートナーとして当てにしていいのかという点だ。最近の歴史を見る限り、中国はロシアにとって頼もしい味方とは言い難い。

2014年のクリミア侵攻後、欧米などの経済制裁によりロシア経済が大打撃を受けたとき、ロシアはすぐに中国に助けを求めた。ところが、期待は裏切られた。2015年、ロシアと中国の間の貿易高は前年比で29%減。中国の対ロシア直接投資も減少した。

そもそもロシアは、世界秩序のルールを決める資格を持った超大国として、欧米主導の安全保障体制に異を唱えているはず。中国を頼れば、超大国どころか中国の子分になってしまうのではないか。ロシア人の間にはこんな不安もある。

ロシア人がウクライナ情勢に関して抱いている思いは、決して単純なものではないのだ。

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