マティス前国防長官は抗議デモへの権威主義的な対応をめぐり、かつて自分が仕えた現職大統領に手厳しい批判を加えた。「私は軍に入隊した約50年前、憲法を支持し、守ると誓った。いかなる状況であれ、同じ宣誓をした部隊が市民の憲法上の権利を侵害するよう命令されるとは、夢にも思わなかった。それも、選挙で選ばれた米軍最高司令官に奇妙な写真撮影の機会を提供するという目的のために」

アメリカの民主主義の長所の1つは、言論の自由であるはずだ。「黒人の命も大事」運動の抗議は、奴隷制度という人種差別の原罪を持つ国に改革を促すポジティブな力として歓迎すべきだ。

トランプが「黒人の命も大事」やアンティファを脅威と見なすのは、白人至上主義にとっての脅威だからだ。トランプのコアな支持層は、人口動態の変化に不安を抱いている。50年前はアメリカ人の88%が白人だったが、数十年後には少数派になる。いま白人で最も多い年齢は58歳だが、アジア系は29歳、黒人は27歳、中南米系は11歳だ。

トランプは、白人が多い支持層の恐怖と不安をあおることが再選の鍵だと理解している。2020年はアメリカ最大の試練の年になるかもしれない。

<2020年6月16日号掲載>

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