憲法にとっての敗北に

だがブルームバーグの浮上は、民主党にとって打撃になる可能性が高い。有力候補が5人に増えれば、予備選の序盤戦で州ごとに勝者が入れ替わりかねない。

トップの座を確実にする候補者が出てこなければ、どの候補も指名獲得に必要な代議員票を確保できず、民主党は「ブローカー・コンベンション」と呼ばれる党大会での自由投票で指名候補を選ぶことになる。自由投票だからヒラリーに肩入れしてもいい。あるいは、オバマ夫人のミシェルを指名候補に選んでもいい。いずれにしてもコンベンションになった時点で、民主党は「エリート主義でまとまりがない」というトランプの主張が裏付けられることになる。

20年ほど前、東欧出身の友人に言われた。アメリカは腐敗したペテン師が大統領になっても国が存続できる、おそらく世界で唯一の大国だと。

これは皮肉の込められた称賛だった。しかしトランプ当選の可能性が前回選挙より高まっていることを考えると、アメリカはまさに彼が言ったとおりの状態で8年間を過ごす可能性がある。

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トランプには熱狂的な支持層がいる(2019年12月、ペンシルベニア州) STEPHANIE KEITH-REUTERS

トランプの再選は、国が地政学的にも経済的にも好調なため、有権者が無能な指導者を大目に見てもいいと考えていることを示す。だが一方でアメリカは、何世紀にもわたって国に強さをもたらしてきた憲法を弱体化させる深刻なリスクを抱えている。

もしトランプが再選されれば、それは合衆国憲法にとって、そして建国の父たちが描いた人格と思慮と創造性を持つ大統領像にとっての敗北にほかならない。

<2019年12月31日/2020年1月7日号掲載>

【参考記事】安倍外交、活発に外遊しても世界に認められない...「見える化」の処方箋

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弾劾訴追を受けたアメリカ史上3人目の大統領になったというのに、ドナルド・トランプの再選の可能性が急上昇している。トランプが相手だと、理屈も政治力学も通じない。いまブックメーカーは、トランプが2期を務め上げる連続で4人目の大統領となる確率を50%近いと見積もっている。