15年、当時国防相だったムハンマドはイエメン北部を占拠する武装組織フーシ派への攻撃を開始し、一時期は泥沼状態に陥っていたが、サウジアラビアとイランの和解でイエメン情勢は若干落ち着いた。
他方でサウジアラビアはイスラエルと接近し、23年10月には国交正常化も近いとみられていた。しかし、イスラエルが奇襲を仕掛けてきたイスラム組織ハマスに対して猛烈な反撃を展開。サウジは態度を硬化させ、両国の国交正常化は一気に遠のいた。
ムハンマドはトランプを信頼しているわけではない。第1次政権でトランプがイラン攻撃を躊躇したことで不信感を募らせたためだ。現在は武力行使の可能性を含めてイランに強い圧力をかけ、フーシ派への攻撃を強めるが、それで域内情勢が危機に瀕することを望んでいるとも思えない。国防相が4月にイランを訪問したのはその表れだ。サウジアラビアにとって対米関係は重要だが、ビジョン達成には国益と大義の間でバランスを取った全方位外交を続ける必要がある。
米・イラン戦争で変わる地域紛争の「大前提」/石油危機を恐れるべき理由