この問題については、すでにあちこちで議論されているので、お気づきのかたも多いだろう。日本は135億ドルという莫大な資金援助を行ったのに、この感謝広告で国旗はおろか、国名すら記されなかったのである。

このことは、多くの日本の政治家にとって深刻なトラウマとなった。あれだけの金を支払ったのに、クウェートから感謝されなかった。やっぱり金だけではダメだ。汗や血を流さねば、国際社会からは評価されない、と。ここから、自衛隊の海外派遣の議論が本格的にスタートするのである。

危険な掃海任務に従事したから記念切手入りした?

一般的な認識に近いものとして、Wikipedia日本語版にある「自衛隊ペルシャ湾派遣」という項目を見てみよう。ここには次のような記述がある(2017年7月25日閲覧)。


湾岸戦争に際して日本は、130億ドルにも上る資金協力を行った。それにもかかわらず、クウェートが湾岸戦争終結直後に、ワシントン・ポスト紙の全面を使って謝意を表した広告には、クウェート解放に貢献した全ての国の国旗が掲載されていたが、金銭的貢献しか行わなかった日本は除かれていた。しかし掃海部隊が派遣されたあとでは、クウェートでは、日本の国旗が新たに他国に加わって印刷された記念切手が発行されるなど、危険を伴った人的貢献への評価が一変した。

上に述べたとおり、広告には「クウェート解放に貢献した全ての国の国旗が掲載された」わけではない。この文章にはそうした事実関係の誤りはあるものの、多くの人がこういう認識をもっていることは否定できないだろう。

さらに、自衛隊の掃海部隊がペルシア湾に派遣され、危険な掃海任務に従事すると、日本への評価が一変し、クウェートは日本の国旗を加えた記念切手を発行し、日本の人的貢献に感謝するようになった、という部分も、どこかで聞いたことがあるのではないだろうか。やっぱり、金を出すだけではダメで、危険を冒したり、汗を流したりすれば、感謝されるんだというロジックである。

その記念切手というのは下に挙げたものであろう。これは、湾岸戦争の終了後しばらくして、わたし自身がクウェートを訪問したときに、クウェートで購入したものである。

たしかに上から三段目、一番右端に日本の国旗がある。やっぱり、自衛隊を派遣してよかったなあ。今度はクウェートから感謝された、といいたいところだが、感謝広告にはじまる、この一連のロジックにはおかしなところがいくつかある。

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【参考記事】「自衛隊は軍隊」は国際社会の常識

クウェート人は感謝していた