セルビア側はS-300については高価すぎるとして購入を断ったようだが、その他の兵器システムについては購入に前向きな姿勢を示しているようだ。ロゴジン副首相によれば、セルビア国防省からロシアの武器輸出管轄官庁である連邦軍事技術協力庁(FSVTS)に購入希望リストが提出されたという。このリストは今後、設置される予定のロシア=セルビア間の軍事技術協力委員会で検討される予定で、第1回会合は1月25日も開催予定とされる。
このほかにもロゴジン副首相は、セルビア農産品のロシアへの輸出についても言及した。ロシアは、EUによるロシアへの制裁措置や、トルコによるロシア空軍機撃墜の報復措置として農産品の禁輸措置を課しており、セルビアを不足する農産品の代替輸入先として検討する形だ。
セルビア接近の背景
ロシアのセルビア接近の背景にあるのは、バルカン半島の旧ユーゴスビア構成諸国に対するEU及びNATO拡大の動きだ。
昨年12月、旧ユーゴスラビアのモンテネグロのNATO加盟が本決まりとなったことに対し、ロシアのペスコフ大統領府報道官は、対抗措置を示唆するなど、危機感を露わにした。ロゴジン副首相が訪問したセルビアも実はロシア一辺倒というわけではなく、2014年1月からEUへの加盟交渉を開始している。
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当然、ロシアとしてはバルカン半島の友好国がEU入りするのは好ましいはずはなく、今回のロゴジン副首相訪問も楔を打ち込む意味合いがある。たとえばロゴジン副首相は、今回のセルビア訪問中、「セルビアの欧州に対する選択に何のリスクもないとは思わない」と述べ、セルビアがEUに加盟すれば大量に難民が流入する可能性もあると指摘。その上で、「ケルンNo.2」もありうるなどと述べた。
昨年12月、ドイツのケルンで難民による女性への集団性的暴行事件が発生したことを指したものだが、あまりにもあからさまな脅しに、「彼は自分の国のことを気にかけるべきだ。自分たちのことは自分で気にかける」(ミハイロヴィッチ・セルビア副首相)など感情的な反発も呼んだ。
このあたりは、「ハラキリ」発言で日本人の感情を逆撫でしたロゴジン副首相らしいとも言えるが、ロシア側の焦りを反映していると見ることもできないではない。
そもそもロシアが東欧やバルカンで「勢力圏」を失わざるを得なかったのは、ロシアの勢力圏にとどまることへの経済的・政治的メリットが薄いことに加え、社会主義時代の統治に対する国民の不満がロシアからの遠心力として働いているためである。