貧困撲滅を掲げたのに貧困率は上昇、インフレも加速した
政治活動家でもない人物によるSNSでの政府批判が反響を呼んだのは、7月末にエジプトの中央統計局が2017/18年の貧困率を32.5%と発表し、人々に衝撃を与えた直後だったためでもある。エジプトの貧困ラインは「1日1.3ドル」以下の収入と定義されているが、2015年の27.8%から4.7ポイント上昇し、国民の3人に1人が貧困という事実が突き付けられた。

さらに、エジプト政府が設定している「1日1.3ドル」という貧困ラインは、世界銀行が2015年に設定している「1日1.9ドル」よりも低い。世銀は今年5月、エジプトについて「人口の60%が貧困または経済的弱者」と認定している。
エジプト政府は2018年、エジプトの貧困率を2020年に半分にし、2030年にはゼロにすると貧困撲滅宣言をしたが、貧困率は逆に上昇したわけだ。
シーシ政権になって貧困が拡大した要因として指摘されているのは、2016年に国際通貨基金(IMF)から3年間で総額120億ドルの融資を受ける条件として財政健全化政策を実施し、さまざまな政府補助金を廃止・削減したことだ。路線バスの切符が2エジプトポンド(13円)から4エジプトポンド(28円)に上がるなど、電気、水道、公共交通機関などの公共料金が軒並み上がった。
さらに、2016年11月にはエジプトポンドが変動相場制になり、エジプトポンドの対ドルレートが1ドル=8.8エジプトポンドから同年末までに最高 1ドル=19ポンドに急落し、これによってインフレが加速した。
インフレ率は2016年10.2%、2017年23.3%、2018年21.6%で、2019年になってからは10%を切る水準まで下がっているものの、肉や野菜などの食料品も値上がりし、人々の生活を圧迫している。
アルジャジーラに出演後、著名な政治学者も逮捕された
9月20日のデモが起きた後、アルジャジーラはエジプトのデモを巡る討論番組を放送。カイロ大学政治学部のナフィア教授がカイロから参加し、反政府デモが起こった背景を解説した。
「人々の怒りは日々募っている。政府の説明と実際に起こっていることとの溝が明らかに広がっている。なかでも経済的な問題が大きい。人々は指導者を信じて、困難を耐えれば国が生まれ変わり、生活水準も上がってくると信じていた。ところが、公式の統計では3分の1の国民が貧困ライン以下にあり、その上の3分の1は貧困ラインに近づきつつあると知らされた。そこへ、ムハンマド・アリが政権にとんでもない腐敗があると言い出し、資金が宮殿に費やされていることが明らかになった」
この番組出演後、ナフィア教授はエジプトで逮捕された。