ヌスラ戦線については、米国が方針を転換する前の2014年8月、フォーリー氏がISに殺害された数日後に、別のフリージャーナリストのテオ・カーチス氏がヌスラ戦線に2年間拘束された後、無事に解放された。この件ではカタールの衛星テレビ局「アルジャジーラ」が「カタール政府が仲介し、ヌスラ戦線から米国人ジャーナリストの解放を支援した」と報じた。
この事件で、米国政府は身代金の支払いを否定しているが、米衛星テレビのCNNは捜査当局者の話として「米国は解放の交渉には関わっていないが、解放が無事行われるよう民間を支援した」と報じている。
この時、ケリー国務長官は声明を出し、「2年間、米国政府はテオの解放を実現し、さらにシリアで人質になっているすべての米国人の解放を支援してくれる力になってくれる者、影響力を持っている者、手段を有するかもしれない者たちに緊急の助力を求めて20カ国以上の国々と連絡をとった」と明らかにした。
米国の例を見ても、安田さんを無事帰還させることは、日本政府にとっても「最優先課題」でなければならない。「テロ組織に身代金を払わない、交渉しない」という安全保障上の原則を唱えるだけでは、「国民を守る」という国の責任を全うすることにはならない。
そのために、テロ組織であるヌスラ戦線と政府が直接連絡することを含めて、慎重に、あらゆるチャンネルを探る必要がある。米国人のカーチス氏の解放の時にカタールが仲介役を果たしたのも、米国政府が働きかけた結果である。反体制地域での土地勘があり、取材経験を持つフリーのジャーナリストとの協力も不可欠である。この問題で日本政府の経験や実力が十分でないことは誰もが知っているが、だからこそ、国内外や官民を超えて幅広く協力して目標を達成するような姿勢が求められるはずだ。