米国で2014年8月にフリージャーナリストのジェームズ・フォーリー氏がIS支配地のシリア北部ラッカにおいて斬首され殺害された時、フォーリー氏の家族が米ABCテレビで、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)の幹部から繰り返し、身代金を支払うのはテロを支援することを意味すると言われたと明らかにした、という。

 オバマ大統領はこのような政府の対応を見直し、「私は人質事件の対応策の全面的な見直しを命じた」としている。新しい大統領政策指令(PPD)と、政府機関がその指令を実施することを求める大統領令(EO)を出した。

 それによると、「米国人人質を安全かつ迅速に取り戻すために政府の力のあらゆる要素を使う。米国はテロ組織に身代金を払うような妥協はしないが、政府や人質の家族、または家族を助ける第三者が、人質をとっている組織と連絡をとることを妨げない」と政府の積極的な関与を打ち出した。そのために、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)のもとに政府の横断的な「人質対策チーム」を設置し、政府の人質政策が迅速に、効果的に実施されるようにした。上級外交官を人質問題の大統領特使として任命し、人質を無事に国に戻すための横断的な中核部署を政府に置くこととし、すでに連邦捜査局(FBI)で合同チームができて、仕事を始めていることも明らかにした。

 人質が殺されても「テロ組織に妥協しない」ことが、これまでの米政府の安全保障上の大方針だった。米政府が「テロ組織に身代金を払わない」という方針は変わらないが、だから「テロ組織と関わらない」で終わりだった人質問題への対応が、「国の安全保障」の名のもとで個人の安全が犠牲になるのではなく、「国が自国民個人の安全を保障する」ことを最優先課題として掲げた。この方針転換は、国や政府の関係者に、「自国民の安全」についての意識改革を迫るものである。

 日本政府が繰り返している「テロ組織とは交渉しない」という従来の姿勢が、欧州諸国は自国民の救出に積極的に乗り出し、強硬だった米国さえも、「自国民保護を最優先」というようになった。そのような流れの中で、安田さん問題に対する日本政府の対応が問われる。

ヌスラ戦線はこれまで人質を殺したことがない

 安田さんを拘束していると見られるヌスラ戦線と、昨年1月に後藤さんと湯川さんを殺害したISは、ともに昨年12月に国連安保理から「テロ組織」の認定を受けたイスラム武装組織であるが、人質問題の対応では際立った対象を見せる。ISが多くのイラク人、特にキリスト教やイスラム教シーア派やヤジーディ教徒などを殺し、さらに欧米のジャーナリストや援助関係者を次々と殺しているのに対して、ヌスラ戦線は人質をとってはいるが、人質交渉が決裂して人質が殺されたことはないという。

 ヌスラ戦線もイラク人のキリスト教徒や欧米の援助関係者、メディア関係者などを人質にとり、多くの場合は政府が億円単位の身代金を払って解放しているが、中には身代金を払わないで解放された例もあるとされる。

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