日本のコロナ感染者急減、ワクチン集中接種で「集団免疫」効果も?

2021年10月19日(火)19時00分
アナ・カールソン

<専門家からは再拡大を懸念する声や感染者急減の理由に関する包括的な検証を求める声も>

日本ではこの夏、新型コロナウイルス感染の第5波がピークに達し、8月半ばには、東京の1日あたりの新規感染者が6000人近くにのぼった。だがその後、感染者数は急速に減少。10月上旬から、東京の1日あたりの新規感染者数は11カ月ぶりに100人を下回る日が続いている。

感染者の急減については、当惑する声がある一方で、ワクチン接種が迅速に進められたことが一因ではないかと指摘する声もある。ほかにも、飲食店や娯楽施設の夜間営業停止要請や、マスク着用の徹底などが功を奏したと見る向きがある。

東邦大学の舘田一博教授(微生物・感染症学)は、「日本では64歳未満の人口を対象としたワクチン接種が、迅速かつ集中的に進められた。これによって一時的に、集団免疫に似た状態がつくられている」との見方を示した。

新型コロナワクチンの接種を済ませた人は、人口の70%近くにのぼっている。日本ではこれまでロックダウンを一度も行っておらず、代わりに複数回にわたって緊急事態宣言を発令してきた。

だが専門家は、感染者が急減した具体的な理由が分かっていないまま冬を迎えることに、懸念を抱いている。

以下にAP通信の報道を引用する。

検査陽性率も急激に下落

感染者数はなぜ減少したのか。

国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は、「それは難しい質問だ。ワクチン接種が進んだことの効果はきわめて大きいが、検証が必要だ」と述べた。「混雑した場所や換気の悪い場所など、感染リスクが高い場所に集まる人々は、既に感染して自然免疫を獲得している可能性がある」

感染者が減ったのは検査実施数が減ったからではないかという憶測もあるが、東京都のデータを見ると、8月後半から10月半ばにかけて、検査実施数の減少が約30%なのに対して、検査陽性率は25%から1%に下がっている。東京都医師会の猪口正孝副会長は、検査陽性率の下落は、感染拡大ペースの減速を示していると指摘する。

日本の緊急事態宣言は、ロックダウンとは異なるものの、バーや飲食店を主な対象として、営業時間の短縮やアルコール類の提供停止を要請する措置が取られた。その一方で、大勢の人が混雑した電車での通勤を継続。スタジアムなどで開催される各種イベントも、ソーシャルディスタンスの確保など感染対策を取った上で開催された。

今は緊急事態宣言も解除されており、政府は社会活動や経済活動の再開範囲を徐々に拡大。ワクチンの接種証明や検査実施数の拡大を活用して、スポーツ大会やパック旅行の実証実験が可能になっている。

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