失敗に失敗を重ねた日本政府、五輪後の「政治ゲーム」にはどう影響する?

2021年7月21日(水)17時44分
伊藤隆敏(米コロンビア大学国際・公共政策大学院教授)

だが世論も、東京五輪の中止を求める人々と、社会・経済活動の厳しい制限に反対する人々に割れている。全ての人を満足させることはできず、政府は無観客での五輪開催という折衷案を取ることにした。

東京で断続的に感染者が増加し、緊急事態宣言が細切れに発令されていることから、消費は全体的に落ち込んでいる。今年4~6月の日経平均株価は、主要先進国の株式市場の中で最もパフォーマンスが悪かった。

景気の悪化は与党にとって政治的打撃になるため、菅首相は力強い経済活動の再開と景気回復を達成しなければならない。

だが経済活動を全面的に再開させ、東京五輪に祝祭性を持たせるには、新規感染者数を抑えなくてはならない。その唯一の方法は、ニューヨークのように迅速にワクチン接種を進めることだった。

日本はワクチン確保で後れを取った。政府は今になって、6月末までのモデルナ社製ワクチンの供給量が、当初予定の4000万回分から1370万回分に減っていたことを明らかにした。

夏に何が起ころうと、9月には自民党の総裁選が行われ、10月までには総選挙が実施される。東京五輪が終われば、すぐに日本の政治ゲームが始まるのだ。

©Project Syndicate

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