中国ワクチン、有効率わずか50% 南米に動揺と失望が広がる

2021年4月21日(水)18時45分
青葉やまと

<中国疫病管理当局のトップが、ワクチンの有効性の低さを認めた。中国ワクチンに頼るブラジル、チリでも動揺が広がる...... >

中国疾病管理局のガオ・フー局長は、中西部の成都市で開かれたカンファレンスの場で、新型コロナウイルスに対するワクチンの有効性が低いとの認識を示した。フー氏は「現行のワクチンがあまり高い保護率を有していない問題を解決してゆく」と発言した。

AP通信は4月11日、「中国高官がワクチン有効率の低さ認める」との見出しでこの一件を報じている。記事は「疾病管理担当の中国高官が、稀に見る自認として、現行ワクチンのコロナウイルスに対する予防性能が低いこと」を認めたと述べている。

フー氏はその後AP通信に対し、「特段に中国向けだけでなく、世界のワクチン」の有効率を意図した発言であったと釈明した。しかし、米ファイザー製および米モデルナ製ワクチンは約95%、アストラゼネカ製は最大90%と、いずれも高い有効率を示している。どのワクチンが具体的に念頭にあったかをAP通信が重ねて尋ねたところ、フー氏から返答は得られなかった。

一方で中国では現在、集団接種用に5種類のワクチンを使用しており、各製造元は有効率を50%から79%と公称している。香港ヘラルド紙はファイザー製ワクチンの感染予防面での有効率が97%となっているのに対し、中国シノバック製は50.4%であったとの数字を伝え、有効率の低さを問題視している。

中国製ワクチン接種する南米に動揺が拡がる

中国はシノバック製ワクチンを大量に輸出している。現行ワクチンの効力の低さを事実上認めた発言は、中国域外にも波紋を広げている。輸出先のひとつに、1日あたりの新たな死者数が世界ワースト1位となっているブラジルがある。ブラジルでは日々3000名前後が亡くなっており、これは世界の日ごと死者数のおよそ4人に1人を占める規模だ。

米ワシントン・ポスト紙は「ブラジルがすべてを賭けたこのワクチンは、製造元の国(中国)にとってさえ失望であった」と報じている。アメリカ製とイギリス製ワクチンを確保できないブラジルでは、価格が安く流通管理が比較的容易な中国シノバック社製のワクチン「コロナバック」を1月から接種している。

ブラジルのネットメディアでは以前から、「ブラジルは二流のワクチンに甘んじている」とする内容の記事が複数出回り、国民は不安に駆られていた。ワクチンを接種したように見せかける「空打ち」と呼ばれる行為も問題になっており、これについては医療関係者が転売のためワクチンを手元に残しているものと見られている。

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