カリフォルニア州で急速に広がる変異株、重症化率が高い可能性も

2021年2月25日(木)16時30分
アリストス・ジョージャウ

チームは感染性の高さを示すエビデンスの1つとして、変異株の感染者はほかの株の感染者に比べ、鼻腔内のウイルス量がおよそ2倍も多いことを挙げている。そのため飛沫や呼気を通じた感染リスクが高まるというのだ。

カリフォルニア大学サンディエゴ校の感染症の専門家ロバート・スクーリー(UCSFチームの研究には関与していない)は、「ウイルス量が多いことから......患者の容態も悪化すると考えていい」と、サイエンスに述べている。

UCSFチームは先に挙げたデータのほかに、高齢者施設と家庭内で感染が広がった事例についても分析を試みたが、そこでも感染性の高さが裏付けられたと報告している。

一方で、カリフォルニア州の変異株は、イギリスで最初に見つかり、全米に広がった変異株B.1.1.7ほど深刻な脅威ではないとの見方もある。

「地域的にはほかの株より急速に広がっているとみて間違いなさそうだが、B.1.1.7級に感染性が高いことを示すエビデンスはない」と、ハーバード大学公衆衛生学大学院の疫学者ウィリアム・ハネッジはニューヨーク・タイムズに語っている。

ただ、毒性の強さをうかがわせるデータはある。UCSFのクリニックか医療センターで治療を受けた患者300人余りのうち、B.1.427かB.1.429に感染した人はほかの株の感染者に比べ、重症化率(ICUに入る確率)が4.8倍、死亡率が11倍高かったと、UCSFチームは報告している。

ただし、これだけではサンプル数が少なすぎて、毒性が強まったとは断定できないと、チウらも認めている。

地域的な脅威

「私が査読者なら、これほど挑発的な主張をするからには、より多くの感染者のより多くのデータが必要だと指摘するだろう」と、ウィスコンシン大学マディソン校のウイルス学者デービッド・オコナーはサイエンスに述べている。

ハーバードのハネッジも、UCSFチームのデータだけでは、B.1.427とB.1.429を要警戒・変異株に指定するには不十分だとみている。

UCSFチームの分析結果は「メディアが広く伝える価値がある。だが、これだけで要警戒に分類するのは無理がある」と、ハネッジはニューヨーク・タイムズに語っている。

イギリスの変異株は、ほかの国々でも最初に感染が確認されると、あっという間に広がったが、B.1.427とB.1.429ではそうした現象は起きておらず、「さほど深刻な脅威ではない」とみていいと、ハネッジは言う。

ただ、カリフォルニア州ではB.1.427とB.1.429がイギリスの変異株以上に猛威を振るう可能性も否定できないと、チウは案じている。

アメリカではワクチン接種のペースが加速しているが、次々に出現する変異株からは目が離せない。

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