世界がスウェーデンに抱く「モデル国家」という虚像

2020年11月5日(木)18時30分
アンドルー・ブラウン(ジャーナリスト)

筆者は2014年の総選挙後、敗北を受けて首相を辞任した穏健党のフレデリック・ラインフェルト党首に、右派の票を失ったことを悔やんでいるかと尋ねた。彼はリベラルとして移動の自由を信じてきたので、今さらその考えを放棄する気はなかったと答えた。

グローバル化のプラス面を歓迎する開放的な反差別主義者──そんなスウェーデン人の自画像は、結局のところこの国の社会的同調性を反映した虚像だったようだ。

一方、スウェーデン民主党は、自国をイスラム法が武力で維持される進入禁止区域が無数にある地獄のような国だと主張した。彼らもまた、自分たちのプロパガンダを信じ、多数の右派外国人の共感を得た。

おそらく振り子は再び揺れるはずだ。10年後の左派は、全てがシンプルで、あるべき姿を体現する国としてスウェーデンを称賛するだろう。

はっきりしていることが1つあるとすれば、この国は筆者が愛するスウェーデン──風変わりで時に愉快で、うぬぼれの強い僻地として記憶されることはないだろう。この国は人々のリアルな生活の場としてではなく、未来への指針となる海図としてのイメージが強過ぎる。残された問題は、左右両派がこの海図にどんな未来への航海を書き込むかだ。

From Foreign Policy Magazine

<2020年11月10日号掲載>

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