ウイグル人根絶やし計画を進める中国と我ら共犯者

2020年7月16日(木)19時10分
ライハン・アサット(弁護士、米テゥルク系民族弁護士協会会長) 、ヨナー・ダイアモンド(ラウル・ワレンバーグ人権センター・法律顧問)

こうした監視を支援するのが、「一体化統合作戦プラットフォーム」(IJOP)だ。監視カメラの映像、スマートフォンなどから個人情報を収集・解析し、収容所送りの「危険分子」のリストを作成する。漢族の監視要員100万人超が、ウイグル人の動きを見張るアプリをダウンロードし、家族間のやりとりなどもチェックし、疑わしい内容があれば逐一当局に知らせている。

中国は世界で最も強引に個人情報に介入する大衆監視システムを運営しているが、国際社会がその実態を知ろうとしても、秘密のベールに閉ざされたままだ。今すぐ調査を実施し、ジェノサイドの性質、深度、スピードを明らかにしなければ、手遅れになる。

ウイグル人弾圧をジェノサイドと認定するかどうかは生死を分ける問題だ。1994年、米政府が延々と議論を続けた挙句に、ようやくルワンダの状況をジェノサイドと認めた時には、100万人近いツチ族が殺されていた。虐殺の嵐が吹き荒れていた1994年5月1日付けの米国務省の文書には、「ジェノサイドと分かれば、(米政府が)何らかの対応を取ることになる」と書かれている。

当時のビル・クリントン米大統領は、その4年後に生き残ったルワンダの人々を前に、米政府の歴史的な過ちを認め、「証拠を目前にしながら、ためらうようなことは二度と繰り返さない」と誓った。

今年5月に米上院で「ウイグル人権政策法案」が可決されたことは、アメリカが踏み出した建設的な一歩だ。これにより、またもや人道的な悲劇が繰り返されることを回避できるだろう。米政府が中国当局にマグニッキー法(「人権侵害や汚職に関与している」とみなす外国人に対して適用する法律)に基づく制裁を科すこと、さらにはジェノサイドなどの残虐行為に対して、正式に非難声明を出すことを盛り込んだこの法案は、上院で圧倒的多数の支持を得た。

誰もが共犯者に

米政府はこれまでに人権を侵害する監視システムの運営とウイグル人の収容所の拡大にかかわったとして、中国の高官4人と1つの機関を制裁対象に指定した。加えて、ウイグル人弾圧をジェノサイドに該当する行為として、正式に糾弾する必要がある。これはそう難しいことではないはずだ。その証拠に、米国務省のモーガン・オータガス報道官は「ウイグルの人々の身に起きていることは......ホロコースト(ナチスのユダヤ人虐殺)以降、私たちが目にした最悪の犯罪だろう」と述べている。

米政府がウイグル人弾圧をジェノサイドとして非難することはただの象徴的な行為ではない。ほかの国々も抗議に加わり、消費者もウイグル人の強制労働などで製造されている80の国際ブランドの製品の不買運動に協力するだろう。中国の工場でウイグル人に現代版の奴隷労働を強い、不当な利益をむさぼっているグローバル企業も、抗議の声が高まれば、サプライチェーンの見直しを迫られる。企業にはジェノサイドに加担して利益を上げるような行為を慎み、倫理的な調達を行うよう強力な圧力がかかるはずだ。

世界各地の人々が経済的にも社会的にも密接に結び付いている今の世界では、ジェノサイドが行われていることを知りつつ知らん顔をしていれば、ただの傍観者ではすまされない。黙っていれば、共犯者になる。

From Foreign Policy Magazine

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