「かくて私は教授を『クビ』になった」大月隆寛、地方大学の窮状を語る

2020年7月9日(木)17時40分
大月隆寛(民俗学者)

どうしてこういうワヤなことになったのか。それは今後の法廷で明らかにされてゆくだろうし、その都度、できる限り世間の皆さまの目に触れるような機会をつくってゆくつもりだが、「グローバル化」の掛け声に流され留学生を考えなしに導き入れた結果、こういう地方の零細私大が抱える現状に関する個別具体の「リアル」は言葉にされず、大文字の言葉だけが飛び交う空中戦で「大学」問題は「処理」されてゆく。

「自己責任」の正義任せに大学の淘汰が叫ばれ、大都市圏の大規模大学だけが生き残り、地元に根差した小さな教育の場は国公立・私立を問わず枯れてゆくばかり。事は単に、北海道の片隅の小さな私大のやらかしたワヤ、というだけではない。最後に、その「どうして」を解く際の大事なカギになるだろう事実を少しだけ。

・今年からこの大学の理事会に「嶋●和●」という名前が新たに加わっていること。
・この御仁は以前から経営戦略会議で留学生受け入れの「アドバイス」をしており、天下り斡旋事件で有名な元文科省事務次官の前川喜平氏の片腕とされた人物であること。

現場からは、ひとまず以上です。北海道、今年の夏は肌寒いです。

大月隆寛
TAKAHIRO OTSUKI
民俗学者。東京外国語大学助手、国立歴史民俗博物館助教授などを歴任。2007年より札幌国際大学教授。著書に『厩舎物語』『無法松の影』『全身民俗学者』など多数。

<2020年7月14日号掲載>

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