中国・超大国への道、最大の障壁は「日本」──そこで浮上する第2の道とは

2020年6月27日(土)18時21分
ハル・ブランズ(ジョンズ・ホプキンズ大学教授)、ジェイク・サリバン(カーネギー国際平和財団上級研究員)

<かつてアメリカが通った道か、歴史の常識を覆す新たな道か。習体制はどちらのアプローチを選ぶ?本誌「中国マスク外交」特集より>

もはや、超大国になる野望を隠すつもりはないらしい。中国が世界のリーダーの地位をアメリカから奪おうとしていることに疑いの余地はない。その兆候は、世界中のあらゆる場所に表れている。


習近平国家主席は2017年、中国が「新時代」に突入したと宣言し、「世界の舞台で中心的な役割を果たす」と述べた。19年には米中関係が悪化するなかで、中国共産党政権の樹立に至る過程での長く厳しい戦いを引き合いに出して「新しい長征に乗り出すべきだ」と訴えた。

習体制は、新型コロナウイルス危機まで利用しようとしている。自らの権威主義体制のせいで一層深刻化した危機を、自国の国際的な影響力を強化し、中国モデルを輸出する好機と考えているようだ。

中国が真の超大国を目指しているとすれば、その目標を達成するために選べる道は2つある。

1つは、アメリカの多くの戦略専門家が予測してきた道だ。この道を選んだ場合は、まず自国の周辺の西太平洋に君臨し、それを踏み台にしてグローバルな超大国の座を目指すことになる。もう1つは、これとはまるで違う道だ。こちらは、戦略と地政学の歴史的法則に反するアプローチに思えるかもしれない。

中国がどちらの道を選ぶかは、中国の戦略専門家だけでなく、アメリカの戦略専門家にとっても、ひいては世界全体にとっても大きな意味を持つ。

一般的には、中国はまず地域レベルの覇権を打ち立てることから出発して、世界的な影響力を確立しようとするだろうと考える論者が多い。

といっても近隣諸国を物理的に占領するわけではないが(ただし台湾は例外かもしれない)、西太平洋に君臨することを目指す。日本から台湾、フィリピン、インドネシアへと続く「第1列島線」を突破して、その外にまで影響力圏を押し広げていく。近隣諸国の安全保障と経済を実質的に牛耳り、アメリカの同盟体制を引き裂き、アメリカ軍を中国から遠ざけるのだ。

アメリカの専門家がこのシナリオに信憑性を感じる理由の1つは、自国が世界のリーダーに上り詰めた過程とよく似ていることにある。アメリカが世界で主導的な役割を果たそうとするなら、その前に北米で、そして西半球で盤石な地位を築く必要があると、アメリカの指導者たちは建国直後から一貫して考えていた。この考え方は、20世紀の冷戦期にもはっきり見て取れた。

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