精巣が新型コロナウイルスの「隠れ家」に? 否定的な見解も

2020年4月30日(木)18時15分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

<精巣が新型ウイルスの隠れ家となり、免疫システムから逃れている可能性があるという仮説が事実なら...>

世界で猛威を振るい、人類の脅威となっている新型コロナウイルス感染症。「なぜ男性が女性よりも重症化しやすいか」との疑問に対して、アメリカとインドの研究者らは「睾丸に原因がある」との仮説を打ち立てた。

性差によって重症化や長期化の傾向が異なる原因を解明するため、両国の研究者はインド・ムンバイの感染者を対象に実施した試験的な研究で、新型コロナウイルスが潜む細胞に着目。ACE2(アンジオテンシン変換変換酵素2)受容体が男性の精巣に多く存在していることを突き止めた。

ACE2受容体は男女とも肺、胃腸、心臓などに存在しているが、女性の卵巣ではほとんど確認されていないという。

アメリカとインドの研究者はこの結果、「精巣が新型ウイルスの隠れ家となり、免疫システムから逃れている可能性がある」と推測。仮説が事実なら、「精液にウイルスが混入することも想定できるため、性交渉で感染する可能性もある」との見方を示した。

一方で否定的な見解も出ている。米ジョージタウン大学で性差による免疫反応の差異を研究するキャスリン・サンドバーグ博士は、以前からウイルスに対する女性の免疫力が男性よりも強いことはよく知られていると指摘。「精巣が新型ウイルスの隠れ家になっているとの仮説は臆測の域を出ない」とコメントした。

この論文は査読が行われていないため、十分に信用性があるわけではない。ただ精巣にもACE2受容体が存在し、何らかの影響を及ぼしていることを提起した意義は大きいと、サンドバーグ博士は評価している。

【参考記事】死んだ息子の精子で孫を......イスラエルで増える遺体からの精子採取


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