イタリアを感染拡大の「震源地」にした懲りない個人主義

2020年3月19日(木)15時30分
イザベラ・ディオニシオ(在日イタリア人翻訳家・翻訳コーディネーター)

イタリアでは医療も教育もほぼ無料だ。医療サービスを受ける際にわずかな金額を払っているが、日本の3割負担に比べるとタダ同然。しかし、ここ十数年間、政府は莫大な資金を必要とする医療費と教育費の削減という道を度々選んできた。その結果、医療施設の劣化、スタッフ不足や政府機関に対する不信感を引き起こした。

明けない夜はなく、この非常事態もいつか終息を迎える。そのときは、医療問題と政府機関への信頼回復を考え直すいい機会になればいいと、誰もが願っている。

昨日、ミラノ郊外在住の友人と久しぶりに連絡を取った。彼女の母親は3週間前にコロナウイルスの疑いで病院に運ばれ、それ以降会えていない。結果は陰性だったが、いまだに退院できず、病室に閉じ込められているという。「お父さんの文句を聞かなくていいから、せいせいしているわ」と入院中の母親は電話で冗談を連発していたそうだ。娘の不安を和らげるためだろう。

その話を聞いて、私の知っている陽気で温かいイタリアに戻る日はそう遠くないと感じ、心底安心した。

<本誌2020年3月24日号掲載>

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