新型コロナウイルスでマニラ事実上の首都封鎖 初日の検問所には軍も動員、テロ警戒か

2020年3月15日(日)21時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

<欧米の都市が続々と非常事態宣言をするなか、東南アジアではフィリピンが初の首都封鎖に踏み切った>

ドゥテルテ大統領による新型コロナウィルスの感染拡大防止策である事実上の都市封鎖が15日午前零時から始まったフィリピンの首都マニラは、これまでのところ大きいな混乱は生じていない。しかし首都圏マニラに通じる主要道路などに設けられた検問所ではチェックにあたる警察官とともに国軍兵士の姿もみられ、治安当局による厳重な警戒態勢が目立った。

地元マスコミ関係者などからは検問所への兵士の配置について「表向きは警察に協力するというものだが、マニラ封鎖という事態に乗じた犯罪と同時にテロを警戒したものである」との見方がでており、検問所周辺では混乱はないものの緊張した雰囲気が続いているという。

首都圏9市77カ所に検問所

15日から行われている首都圏マニラへの出入りをチェックする検問所は、主要な通りに設けられており、例えばケソン市では「パヤタス通り」「ロドリゲス・リザル・バウンダリー」「サン・マテオ通り」の3カ所で検問が行われ、パラニャケ市では「ロクサス・ブルバードとミア通りの角」「バクラランのUCPB前のエアポートロード」「スチャット・インターチェンジ」など16カ所、パッシグ市では「マンガハンのカギンハワン通りとレクシィ・アベニューの角」「デラ・パス・バランガイのグリーンパークゲート・フェリックス・アベニュー」など8カ所となっており、全体ではマニラ首都圏を構成する16市のうち主に外周部にあたり、他州からの交通がマニラ首都圏に通じる9市の77カ所となっている。

労働者の生活不安やテロ警戒

15日から実施されている首都圏マニラへの出入りの制限は、特別な理由や許可を受けた者以外は原則として足止めされる。このため、マニラ首都圏で仕事、特に日雇いの肉体労働やエンターテインメント業種などに従事していた労働者は実質的な失業状態に陥ることになる。

政府や地方自治体はこうした労働者に対する生活保障や賃金補てんの方針を明確に示していないことから、今後こうした労働者の生活が困窮し、不満が高まることも予想されている。

マスコミ関係者は15日の出入り制限から約2週間後あたりから治安悪化や犯罪増加の懸念が高まる、との見方を伝えている。

さらにこうした社会不安の増大に乗じる形でのイスラム教過激派組織、テロ組織、武装集団などによる爆弾テロを含む不測の事態への懸念もあり、治安当局では検問所への兵士配置とともに、政府関連施設や宗教施設などでの警戒も強める方針という。

フィリピンでは武装抵抗を続ける南部ミンダナオ島やスールー諸島などを拠点とする複数のイスラム系武装組織、テロ組織が現在も政府軍や警察部隊との衝突を繰り返している。

今、あなたにオススメ

今、あなたにオススメ