宇宙から謎の「反復する電波」、2度目の観測:地球外生命からのメッセージ?

2019年1月15日(火)15時50分
高森郁哉

<銀河系外から数ミリ秒程度の非常に短い時間継続する高速電波バースト(FRB)が観測され、地球外生命からのメッセージではないかと大きな注目を詰めている>

銀河系外で発生し、数ミリ秒間継続する電波閃光である「高速電波バースト」(FRB)。FRBの発生メカニズムは不明で、いくつかの仮説が立てられている。なかでも「反復するFRB」は過去に1度しか観測されていない極めてまれな事象だが、このたび2度目の観測例が報告され、大きな注目を集めている。

最新の電波望遠鏡「CHIME」で観測

カナダのブリティッシュコロンビア大学の天文学者を中心とする研究チームが発表し、英学術誌『ネイチャー』に論文が掲載された。

今回の観測は、カナダの天文学者50人が参加するプロジェクトが新たに建造した世界トップクラスの電波望遠鏡「CHIME」(カナダ水素密度マッピング実験)で行われた。2018年夏にCHIMEを試運転した際に13件のFRBを検出し、そのうちの1つ「FRB 180814.J0422+73」が反復するFRBだった。

高速電波バーストとは

高速電波バースト(FRB)は、ミリ秒(千分の1秒)から数ミリ秒程度の非常に短い時間で、電波が銀河系外から放射される現象。2007年に初めて観測され、これまで60回以上記録されている。

FRBがどのようにして生じるのかは不明で、さまざまな仮説が立てられている。高密度の中性子星が他の中性子星や彗星と衝突する際のエネルギーという説や、強力な磁場を持ち高速回転している中性子星「マグネター」のフレアであるという説、末期の恒星が崩壊しブラックホールになる際に発生するエネルギーという説などがある。

「反復するFRB」が注目される理由

先述のように、反復するFRBはこれまで計2回しか観測されておらず、極めてまれだ。最初に観測された反復するFRBは2012年の「FRB 121102」で、地球から約30億光年離れた宇宙で発生していると推定された。

一方、CHIMEが観測したFRB 180814.J0422+73では、6回の反復を検出。これらはみな、約15億光年の彼方にある同じ場所で発生したと推定されている。

反復するFRBが注目されるのは、天体の衝突や崩壊によってFRBが発生するという仮説では説明がつかないからだ(天体が複数回衝突したり、複数回崩壊するということは考えにくい)。そうした理由から、少数派ではあるが、反復するFRBは地球外知的生命が発信するメッセージか、地球外知的生命の宇宙探査機が発するエネルギーではないかと考える研究者もいる。

反復するFRBが地球外知的生命の証拠である可能性に期待しているプロジェクトの1つが、米カリフォルニア大学バークレー校などが参加する「Breakthrough Listen」だ。地球外知的生命が存在する証拠を探す同プロジェクトは、FRB 121102がその手がかりになるとして重点的に観測。2017年8月には、15回のバーストを観測したと報告した。

いずれにせよ、反復するFRBの研究が進めば、謎に包まれたFRBが発生する仕組みが明らかになる可能性も高まるだろう。

CHIME Telescope captures fast radio bursts (FRBs)
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