「作り物」のクイーン賛歌は、結局本物にはかなわない

2018年11月16日(金)18時00分
ジェフリー・ブルーマー

2人の恋愛関係が終わろうとする頃、こんなシーンが挿入される。フレディが彼女に「自分はバイセクシュアルだ」と告白すると、メアリーが「いいえ、あなたはゲイよ」と言う。彼には返す言葉もない(もちろん、この場面はフィクションだ)。

やがてフレディはソロ活動を始め、同性愛者として生きようとするのだが、あっと言う間に自制が利かなくなり、どん底へと落ちていく。そんなシーンで1980年のヒット曲「地獄へ道づれ」を流したのは、彼のHIV感染を示唆するためか。

いずれにせよ、地獄を見たフレディが最後にすがるのは昔の恋人メアリーだ。そして彼女は献身的に彼を救う。悪い話ではないが、どこか空々しい。

クライマックスの「ライブ・エイド」での熱唱シーンでフレディは救われ、神格化される。かなり長いが、ここでは監督も主演のマレックも本気になっている。でも、どうせならネットで本物の「ライブ・エイド」の映像を見てほしい。そのほうが、きっと感動する。

<本誌2018年11月20日号掲載>

※11月20日号(11月13日売り)は「ここまで来た AI医療」特集。長い待ち時間や誤診、莫大なコストといった、病院や診療に付きまとう問題を飛躍的に解消する「切り札」として人工知能に注目が集まっている。患者を救い、医療費は激減。医療の未来はもうここまで来ている。

今、あなたにオススメ

今、あなたにオススメ