観光収入より環境保護を選んだタイ マヤビーチ閉鎖に見る東南アジアの苦悩

2018年6月3日(日)13時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

こうした観光客による環境汚染、環境破壊は他の東南アジア諸国でも深刻化しており、タイでは2006年に南部シミラン諸島のタチャイ島のダイビングスポットへのダイバーの勝手な訪問が禁止された。このため現在ではタイビングは特別な許可を得たクルーズボートで人数を制限して実施されているという。

またマレーシアではボルネオ島東部にある有数のダイビングスポットであるシパダン島が2004年12月末で閉鎖され、シパダン島にあった宿泊施設は全て撤去された。

各地で続くこうした世界的な観光地の閉鎖は、東南アジア各国がようやく観光資源収入より環境保護を優先する重要性に気が付いたことが背景にある。しかし観光産業に依存する地域住民が閉鎖により失業することから反対論が根強いのも事実。フィリピンのボラカイ島では約3万人が失業、閉鎖反対デモも起きている。「観光収入による地元経済活性かサンゴや海洋生物などの環境保護か」という課題を抱えて東南アジア各国は難しい選択を迫られている。


[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

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