トランプみごと!──金正恩がんじがらめ、習近平タジタジ

2018年5月29日(火)18時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

もしも、このような計算が働いたとすれば、なおさら習近平国家主席などに会いに行ったりしている場合ではない。訪中を申請していたとしても、やんわりとキャンセルしただろう。

トランプはなぜ「中国のせい」にしたのか?

(以下、敬称略)

トランプは、5月16日に北朝鮮が南北閣僚級会談をドタキャンしたり、「米朝首脳会談だって考え直さなければならない」などと「デカイ態度」を示し始めたことを、「金正恩が習近平と二度目の会談をしてからのことだ」と言い始め、5月7日と8日の大連会談に疑義を挟み始めた。

それがいかに「イチャモン」であるかは、5月20日の<「北の急変は中国の影響」なのか?――トランプ発言を検証する(前編)>と5月21日の<「北の急変は中国の影響」なのか?――トランプ発言を検証する(後編)>で詳細に論じた。

筆者には、なぜトランプがこのような真実を捻じ曲げた「イチャモン」を付け始めたのかが、気になって仕方なかったからである。

なぜなら5月8日に平壌に帰国した金正恩委員長は翌日の9日、実ににこやかに訪朝したポンペイオ国務長官と会談しており、しかも3人のアメリカ人の人質を返している。二人はものすごく仲良く話し合い、この時点までは米朝関係は非常に良好であったからだ。おかしくなったのは、5月11日から米韓合同軍事演習が始まってからのことである。そのことはトランプにも十分に分かっているはずだ。分かった上で、なぜ事実を捻じ曲げた難癖を付けるのか。そこにひどく、引っかかったのである。だから執拗に追いかけた。

その結果、ここに来て、ハッとした。

遂に、トランプの意図が分かった!

彼は5月16日以降の北朝鮮の態度の変化を「中国のせい」にしておいて、それもちらつかせながら米朝首脳会談を中止した。

ということは、金正恩としては、米朝首脳会談復活となれば、この段階でさらに習近平にSOSを出したら、きっとトランプがまた機嫌を悪くして「中止する」と言い出しかねない。だから、もう訪中はできない。金正恩としては、どんなことをしてでも米朝首脳会談を成功させたいからだ。

おまけに板門店とシンガポールの挟み撃ちで米朝実務者レベルの会談に急に追い込まれた状況で、習近平に会いに行くなどしたら、トランプの逆鱗に触れるだろう。

今、あなたにオススメ

今、あなたにオススメ