ここでもAIが人間を駆逐? 商品先物取引市場、人工知能が主役に

2018年2月15日(木)12時14分

コモディティー(商品先物取引)市場はコンピューターを駆使したアルゴリズム取引や超高速取引(FHT)が急速に広がり、人手を介する従来型ヘッジファンドは大量のデータ処理で不利な立場に立たされ、次々と閉鎖に追い込まれている。

ココア取引で富を築き、スパイ映画「007」の悪玉「ゴールドフィンガー」になぞらえて「チョコフィンガー」の異名を取ったアンソニー・ウォード氏は昨年末、ココアとコーヒーに投資するヘッジファンド「CC+」を閉鎖した。コンピューターによる取引が拡大し続けた結果、相場に歪みが生じ、投資家のみならずコモディティーに依存するさまざまな企業にとっても先を読むのが難しくなったというのが理由だ。

ウォード氏は2016年1月のココア相場について、天候要因でコートジボワールとガーナの収穫が落ち込んで上昇すると予測し、いずれも収穫量は予想通り減少した。しかし相場は下落し、同氏のファンドは損切りを余儀なくされた。

ウォード氏はコンピューターを駆使したファンドが中国の経済指標に反応して売りを出し、ファンダメンタルズと無関係な相場変動を引き起こしたとみている。

同氏はコンピューターを使った取引について「あまりにも巨大で速くて、影響力が大きい。ファンダメンタルズ(基礎的諸条件)を全く無視している」と話す。

1月末にはスティーブン・ジャミソン氏がコモディティー・ヘッジファンド「ジャミソン・キャピタル・パートナーズ」を閉鎖。同氏は投資家に対して、機械学習や人工知能(AI)の普及で短期的な取引機会が失われ、長期的にみるとコモディティー取引で利益を上げるのは難しいと説明した。

昨年は著名石油トレーダーのアンドルー・ホール氏も旗艦ファンドを閉鎖。コンピューターを使った自動取引の急速な普及を受けて、投資家は続々とコモディティーファンドから逃げ出している。

米商品先物取引委員会(CFTC)の昨年の調査によると、先物取引所最大手CMEグループではコンピューターを使った取引が占める比率は農産物で49%、エネルギーで58%に達した。

また調査会社ヘッジファンド・リサーチのまとめによると、昨年のヘッジファンド全体の平均リターンは8.64%だったが、コモディティー・ヘッジファンドは0.43%にとどまった。

ウォード氏によると、コンピューターによる自動取引によって生じる価格の歪み、つまり基礎的諸条件からみて正当と考えられる水準からの乖離は、以前は10─15%だったが、今では25─30%に拡大した。

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