レイプ事件を届け出る日本の被害者は氷山の一角

2017年5月25日(木)16時10分
舞田敏彦(教育社会学者)

ところで、強姦事件の加害者の内訳を警察統計と被害女性の申告で比べると、どういう事件が闇に葬られやすいかが見えてくる。<図2>は、2014年中に警察に検挙された事件(1029件)と、被害女性117人の申告を対比させたものだ。

両者では内訳がかなり違う。警察統計では「知らない人」が半数を占めるが、被害女性の申告では1割しかいない。被害女性の声によると、家族・親戚や知人が警察統計よりもだいぶ多くなっている。家族の名誉を重んじる日本では、家族の犯行は公になりにくい。

【参考記事】インドの性犯罪者が野放しになる訳

家族という「私」の領域に、公が介入するのは望ましい事ではないが、野放しでもいけない。統計には表れにくい家族の病理に対し、社会は絶えず注意を払わなければならない。

<図1>をもう一度見ると、スウェーデンでは強姦事件の発生率(正確には認知率)が飛び抜けて高い。女性が被害届を出しやすい環境が整っているのだろう。国家機関として犯罪被害者庁があり、警察官の女性比率も3割と日本(7.2%)よりずっと高い(2013年)。

日本の犯罪捜査の問題点は明らかだ。


<資料:UNODC「Crime and criminal justice statistics」
    法務省『第4回犯罪被害者実態(暗数)調査』(2013年)
    警察庁『犯罪統計書』
    内閣府『男女間における暴力に関する調査』(2014年度)

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