韓国にパンブーム到来、ソウルの「日本のパン屋」に突撃取材した

2020年2月21日(金)15時20分
朴順梨(ライター)

<「韓国のパンはまずい」と90年代には思っていた。そんなパン不毛の地だった韓国に今、「日本のパン屋」が増加中。総菜パンに生食パン。ソウルの2店舗を訪ね、話を聞いた。本誌「私たちが日本の●●を好きな理由【韓国人編】」特集より>

日本で生まれ育った筆者が、韓国との行き来を始めた90年代半ば頃はずっと、「韓国のパンはまずい」と感じていた。高級デパートで買ったものですら、おいしいと思ったことはなかった。


しかしパティシエが主人公のドラマ『私の名前はキム・サムスン』が放送された2000年代に入ってから、韓国のパンやケーキは格段に味を上げていった。その一端を担ったのが、日本で学んだパティシエや日本人のオーナーシェフたちだ。

「韓国に初めて来たのは2010年だが、激しく変化している最中だったように思う。カフェやベーカリー、スイーツのブームがちょうど来ていて、その場で作って販売する店が流行し始めていた」と、ベーカリー「青い鳥」のオーナー、小林達(すすむ)は言う。

「青い鳥」の外観 HARRY CHUN FOR NEWSWEEK JAPAN

日本人の小林が手掛けるこの店は、2014年に首都ソウル市の弘大地区にオープンして以来人気を博している。カフェスペースも併設するベーカリーだが、この日も朝から女性4人組やカップルがブランチを楽しんでいた。

「いらっしゃいませ。青い鳥イムニダ」。店に入ると、日本語と韓国語がミックスされた挨拶を受ける(イムニダは「~です」の意味)。並んでいるのはメロンパンやチョココロネなど、日本でなじみのものばかりだ。店内に掲げられた「人気パンベスト5」には1位がやきそばパン、2位はえびカツバーガーと書かれている。

小林はソウルの他店で3年間働いてから独立したが、2011年に渡韓した直後は「マシッソヨ(おいしい)」ですら分からなかった。今では流暢に韓国語を話すが、店名はあえて日本語表記にした。

「そのほうが自分でも愛着が持てると思ったのと、日本人がやっている日本風のベーカリーということを見せても、評価してもらえるだろうという自信があったから」

総菜パンが並ぶ「青い鳥」の店内 HARRY CHUN FOR NEWSWEEK JAPAN

顧客は約95%が韓国人

パンは高級グルメではなく、生活の中にあるもの。だから小林は、手軽に買える値段を維持するため、韓国で流通している材料のみを使用する。

「小麦粉の種類が日本よりも少なくて個性が出しにくいところもあるが、ある材料で十分楽しく作れている。やきそばパンが一番人気なのは意外だったが、『炭水化物に炭水化物が入っていて珍しい』と言われたり、日本への留学経験者が『懐かしい』と手に取ってくれている」

常に約70種のパンを並べている同店の客は、約95%が韓国人。日本人との違いは、ナイフとフォークを使いたがる点だ。やきそばパンですらナイフで切ってフォークで食べる人が多いという。

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