不良債権による金融危機が「静かに」進行中──世界経済が直面する悪夢のシナリオ

2021年1月4日(月)10時30分
カーメン・ラインハート(世界銀行副総裁兼チーフエコノミスト)

金融機関のバランスシートに及ぶ打撃は修復に時間がかかるだろう。過去の過剰借り入れでは金融機関の債権回収が長期にわたり、その間貸し渋りが続く傾向がみられた。こうした時期にはなかなか景気が上向かず、多くの場合回復には何年もかかる。危機以前の民間の債務を救済措置により公共部門が肩代わりすれば、金融危機がソブリン債危機に発展しかねない。

金融の脆弱性に対処するにはまず、問題の規模と広がりを評価すること。次に便宜上の措置として業績が悪化した企業の債務再構築と不良債権処理を行うことだ。さもなければ、ゾンビ化した貸し付けに資源をつぎ込み続け、経済回復を遅らせることになる。

これは何としても避けたいシナリオだ。パンデミックは既に甚大な経済損失をもたらしている。さらなる損失を避けるには「静かな金融危機」の回避が最優先課題だ。

(筆者はハーバード大学ケネディスクール教授〔休職中〕。ピーターソン国際経済研究所シニアフェローやメリーランド大学教授も務めた)

©Project Syndicate

<2020年12月29日/2021年1月5日号「ISSUES 2021」特集より>

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