コロナ禍で自動車にもネット販売の波 日産は主力市場の米中で本腰

2020年11月9日(月)11時07分

実物を見て、触って、試乗するのが当たり前だった自動車の買い方が、新型コロナウイルスの影響で急速に「デジタル化」しつつある。消費者の変化に自動車各社が対応を迫られる中、日産自動車が本格的なオンライン販売に乗り出した。

とりわけ力を入れているのが主力市場の中国と米国。販売手法の大きな転換になることからディーラーの中には反発する声もあるが、日産にとっては業績が悪化する中でコスト削減につながる。また、新車のラインアップが少ない日産車を売るのに苦戦しているディーラーの間でも、修理など「アフターケアの収入が保証されるなら」と歓迎する声が聞かれる。

12日の決算発表で

ショールームに足を運びたがらくなった消費者行動の変化に、会社はどう適応しようとしているのか──。日産のある上級役員が同社の経営陣に説明を求めたところ、アシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)が7月下旬の取締役会でプレゼンテーションをした。

そのときのやり取りを知る複数の関係者によると、グプタ氏はインターネットを使った新車販売を強化すると説明。「車選びから納車まで、徹底したデジタルの旅を築きつつある」と話した。ネットで車を比較・検討し、試乗したいモデルを客の手元まで届け、一度も店舗へ行かずに購入プランを作れるようになると語ったという。

ウェブサイトを通じた日産の新車販売は伸びている。複数の関係者によると、中国・欧州・北米における今年上半期の販売は自社サイト経由が11%を占めた。関係者の1人によると、前年同期はそれほどネット販売の状況に注意を払っていなかったが、約半分の4─5%だったという。

「コロナの時代に本格化した新たな購買行動は、これから先もずっと続くものと考えている」と、この関係者は話す。「感染症の大流行は働き方、移動の仕方を変えた。その変化は自動車の買い方にも当てはまる」。

日産は11月12日に7─9月期の決算発表を予定している。ネット販売に関するこうした詳細はその際に公表する見通しだ。同社は今年度、通期で4700億円の営業赤字を見込んでいる。

日産本社の広報担当者はロイターの取材に対し、オンラインで買い物をする需要は新型コロナで一段と強まっており、日産はディーラーとともに顧客の要望に応えていくと回答した。

複数の関係者によると、日産がまず注力しているのが中国と北米だ。自動車の2大市場であると同時に、ネットショッピングの先進国でもある。米国では店舗在庫だけでなく、一定地域の在庫をすべて検索できるシステムを構築した。

中国はそこまでの在庫検索ができないものの、消費者がネットを使った買い物に慣れている。複数の関係者によると、今年は9月までに売れた約75万8000台のうち、17%がオンライン経由だった。

オンライン上で獲得した顧客と日産が位置付けるこうした消費者は、同社の公式サイト(中国では「車巴巴(チェババ)」、米国では「Nissan USA」)を訪れ、連絡先を残す。そして契約の最後まで、あるいは部分的にオンラインを使って自動車を買う。

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