持続可能な未来へ自動車EV化が進むなか、先駆者・日産はバッテリー・リサイクルで一歩先を行く

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2020年3月9日(月)16時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ 広告制作チーム

フォーアールエナジー株式会社の牧野英治代表取締役社長

48個のモジュールごとに従来の100分の1の時間で詳細に測定

まず興味深いのは、フォーアールエナジーの設立が2010年9月、日産リーフの発表が同年12月だという事実だ。EVの発表よりも、電池の再生事業を担う組織の立ち上げが早かった理由を、牧野氏はこう振り返った。

「日産リーフを世に出すと決めた時に、EVは二酸化炭素も排ガスも出さない素晴らしいクルマだから高くても買ってください、というのは通用しないと考えました。では、どうしたらガソリン車と同等の値段にできるかというと、TCO(トータル・コスト・オブ・オーナーシップ)という考え方に行き着いた。まず、ランニングコストは電気代の方が安いから新車時の価格差が縮まる。さらに、電池をリユースして価値が生まれると、EVのTCOはガソリン車並みになると考えたのです。中古EVが流通してから電池を再生する事業を立ち上げるという考え方もありますが、それでは間に合わないと考えたのです」

左上から時計回りに、工場内に停められていた日産リーフ、リーフから外された状態のバッテリーパック、シリアルナンバーとQRコードが付けられた各バッテリーモジュールは製造時からリーフで走行していた時の状況などをトレースすることが可能、バッテリーモジュールの計測装置。

では、EV用電池はどのように再生されるのか。その手順をうかがう。
日産リーフは、48個の電池モジュールを搭載している。これらをひとつひとつ精査して、その能力を把握することから電池再生の作業は始まる。電池は、使われ方や置かれた環境によって性能はばらばらだ。それぞれのモジュールの性能を正確に知ることが最初の難関だったと牧野氏は言う。

「日産リーフは車載IT装置によって電池の状態を見守っています。さらに電池の中にもコンピュータがあって、それらの情報でリユースに必要な電池の性能を把握可能だと思ったんですが、それほど簡単ではなかった。リチウムイオン電池はエネルギー密度が高いので、能力を正しく把握し、能力に応じた用途と使い方を開発しないと、危険な事態につながることもあるのです」

そこでフォーアールエナジーは、回収した電池の性能を浪江事業所で測定することを決定。精度と時間・費用のベストバランスを実現する独自のバッテリー性能測定法を開発した。かつては48個のモジュールをチェックするのに16日かかっていたものを、4時間にまで短縮している。現在は、年間2250台分の日産リーフのバッテリー性能を把握できるという。

コストになるはずの中古電池が、収益になる

フォーアールエナジーのリユース・リサイクル事業にはもうひとつ大きなポイントがある。それは、これまでに出荷した約46万台の日産リーフの電池にはひとつひとつにシリアルナンバーが打たれ、その"生い立ち"を追跡できるという点。トレーサビリティを管理することで、より詳しく電池の性能を知ることができるのだ。
余談になるが、数十万台のEVの電池から得た情報は、今後の新型EV開発、メンテナンス、顧客サービスなどに、大きなアドバンテージになるはずだ。

こうして精査した電池の性能は、大きく3つに分類される。最も性能が高いものはEV用として再生される。2番目は電動フォークリフトやゴルフ場の電動カートなどに使われ、そしてその次が設置型のバックアップ電源として第二の人生を歩む。こうした一連の工程が評価されたフォーアールエナジーは、2019年夏に電池の再利用に関する安全規格である「UL1974」の認証を、世界で初めて取得した。

牧野氏は言う。
「リユースする用途がないと、バッテリーは処理するためにコストがかかります。でもリユースして用途に合った使い方をすれば収益になる。今後、リユースビジネスの拡大・改善に取り組む必要がありますが、コストが収益になるのは大変な違いで、リユースビジネスによりEVの残価を上げることに貢献していきたいと考えています」