持続化給付金「中抜き」疑惑とアベノマスク──不透明取引の「経済性」を読み解く

2020年6月17日(水)12時21分
加谷珪一

<新型コロナウイルス対策の関連事業で相次ぐ不透明な政府調達は、日本経済にも大きな損失をもたらしかねない>

新型コロナウイルスの影響で業績が低迷した中小企業を支援する「持続化給付金」事業について、不透明な業者の選定が行われたとの批判が出ている。全国民にマスク2枚を配った、いわゆる「アベノマスク」についても、同様に調達の不透明性が指摘された。

税金を原資とする政府調達で不透明な取引が行われることは民主国家としてあってはならないことだが、政治のみならず経済的にも大きな問題をはらんでいる。持続化給付金を含む政府支出はGDPの2割弱を占めており、経済におけるウエートが高い。ここで中抜きといった非効率な取引が行われると、日本全体の生産性にも影響する。

持続化給付金は新型コロナウイルスの影響によって業績が落ち込んだ事業者に給付される支援金で、中小企業庁(経済産業省)が担当府省となっている。申請の受け付けや問い合わせ対応、情報システムの構築といった実務は役所ではなく、民間事業者に業務委託されている。

具体的には、一般社団法人サービスデザイン推進協議会という団体が769億円で受注しているが、この団体は決算公告を怠るなど経営実態がはっきりしないとの指摘が出ており、広告代理店大手の電通に多くの業務を749億円で再委託していた。さらに電通は、人材サービス大手パソナなどに業務を外部委託したことも明らかとなった。

業務の丸投げは以前から問題視されてきた

通常この規模の入札になると、相当な受注実績がないと参加資格を得ることは難しい。こうした状況から、この団体は電通という会社を外部に見せないための隠れみのではないかとの疑惑が出ている。

政府から業務を受注した団体が、別の団体や企業に業務を丸投げする行為については、以前から、透明性や資金の有効活用という点で問題視されてきた。2006年には財務大臣が、随意契約でシステム構築などを発注する場合には、原則として一括再委託を禁止するという通達を出している。この通達は主に随意契約を対象としたものだが、今回、実施された入札形式であっても、事前承認を必要とするといった措置を求めている。

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